「着いたよ。」 ゆっくりと車が止まり、隣の逆巻ライトがそう言って車の扉をあけると目の前に現れたのは…まぁなんというか、いかにも『妖しい人住んでます』と言わんばかりの洋館だった。 「…うん」 この家でどんなコトが私の身に降りかかるのだろうかと思うと、恐怖の隙間に好奇心が溢れてくる。怖いけど見たい、顔を手でおおいながらも指の隙間でチラリと見る時のような感情で私の心の中は一杯になる。 「ただいまー。…とりあえず僕の部屋に行こっか?」 広いリビングに声が響くけど、誰の応答もないってことは他の人は留守なのかもしれない。…血を吸いつくされて絶命っていう事態はどうやら免れそうだ。 この際、多少変なことされてももう文句はいいません。無事ここから帰れたら、不登校になろう。そうしよう。 そう心の中で誓いながら、ヤツの後ろをおとなしく付いていったのだった。 **************** 通された部屋は意外というと失礼かもしれないけれど、落ち着いた雰囲気のオシャレな部屋だった。変態なところにばかりが目につくせいで忘れてたけど、コイツ顔はイケメンだしついでにオシャレだった。そう考えると、当たり前なのかもしれない。 「キョロキョロしてるけど、何か面白いものでもあった?」 「逆。普通すぎて…棺桶?!」 「あぁこれ?落ち着くよ?入ってみる?」 寝返りもうてるし真っ暗だしぐっすり寝たいんだったらオススメするよーと言われても、死んでからしか入る予定ないものなんだよね。あれか、殺してやろうか?ってコトですか? 「…遠慮しとく。」 「そう?気が変わったらいつでも言ってくれたら一晩くらい添い寝してあげるからね。ねぇねぇ、ちょっと待っててくれる?」 僕、奈緒ちゃんに見せたいものがあるんだよねーと言って、ライトは部屋を出ていった。…見せたいものってなに?絶対ロクなもんじゃないよね… 変なのだったらどうしよう…ムチとかムチとかアレとか… 私の妄想が膨らみ始めた頃、ギィっと重い音を立てて開く扉。その先にいたのは、ライトではなくて赤髪の…えっと「俺様はアヤトだ。まさか俺の名前知らないってコトはねぇだろ?」そう、逆巻アヤトが立っていた。 「何?ライトならどっか行ったけど。」 「俺が用があるのはライトじゃなくてオマエなんだけど。…なぁ、ライトと寝たんだったら俺とだってヤレるだろ?」 「…どういう思考回路?」 「もったいぶんなよな…なぁいいだろ?」 ベッドの隅に座る私に、近づいてくるアヤト。…何コレ。もしかして…ライトの目的はそういうコトだったの? 「兄弟揃って、変態思考の持ち主なわけ?」 「俺様をあの変態を一緒にすんなよ!あいつの趣味に付き合ってやろうって言う、いわばコレは俺様の優しさと実益を兼ねてんだからさ。」 だから素直に俺に抱かれろよ。ライトより楽しませてやるからさ…そういってぺろりと舌なめずりをする彼は、吸血鬼じゃなくて狼にしか見えない。 ****************** ドサりとベッドに倒される体。ライトよりも少し濃いエメラルドグリーンの瞳は狂気じみて見える。 「抵抗とかしねぇの?」 「力じゃ勝てないってわかってるし、コレ終わらないと帰れないんでしょ?」 「バカじゃねぇみたいだな。…おい、ライト入ってきていいぜ。」 私を押し倒したまま、彼は扉の方へと声をかける。すると、その声に反応するように再び開かれる扉。 「…奈緒ちゃんは、随分肝の据わったビッチちゃんだったんだね。僕ちょっとだけ尊敬するよ。泣き叫んだり取り乱したりしないのは残念だけど、その分アヤトくんの腕の中で乱れて僕を楽しませてよ。」 猫足の椅子を持ってきてベッドの前に置き、そこに彼は足を組み優雅に座りこちらを向いている。 「マジ変態。」 「んふ。素敵な褒め言葉ありがとう。」 アヤト越しにライトを睨みつけると、にやりと笑いながらこちらを見る。 「なぁ、俺がオマエの相手なんだから俺に集中しろよ…っ。」 そう言って荒々しい口づけをアヤトにされ、私はゆっくりと目を閉じそれを受け入れる。 ゆっくりと絡み合う舌は、きらいじゃないかもしれない。 そんなコトを考えながら、アヤトの舌と私のそれを絡らめる。 長い夜の始まりは、乱暴なキスで始まった。 |