Lesson3



僕はね、前からキミのこと知ってたんだよ。
大きな瞳は凛とした強さを持っていて、とても挑発的で。
白い肌からうっすら透けて見える血管がとてもセクシー。
すらっと伸びる肢体と両手に綺麗に収まりそうな胸も素敵だと思う。
人間にしては上出来な外見を持つ彼女はとんでもないビッチ。
事実、彼女の香りは日替わりのように違う男の香りが混じっていた。




そんな、奈緒ちゃんの美味しそうな匂いを嗅いだのは数日前。切った指を治療しようと彼女がやって来た保健室のベッドに、実は僕寝てたんだよね。

『痛い!』って、小さな悲鳴をあげて眉間に皺をよせて消毒する姿は本当に可愛かった。だってあの気の強そうな子が苦痛に顔を歪ませてるなんて、とっても素敵な光景だよね。甘いまるで蠱惑的な彼女の血の香りを味わったのが、あの兄弟の中で僕が初めてでよかった。もし、他の誰かだったらあの場できっと血を吸われてただろうしね。どうせなら、誰でもハジメテを貰いたいじゃない?
絆創膏なんて貼らなくても、僕が直接舐めとってあげたい。あの小さなガーゼ部分に付着するそれすらもったいない。あの小さな傷に牙を突き立てて、傷口を抉ったら彼女はどんな表情を見せてくれるんだろう?
想像するだけでひどく喉が乾く。あの血が欲しい。だけど、今はそのタイミングじゃない。
榊原奈緒を悦楽と苦痛の狭間に落として僕だけのものにしたいんだ。



誘えば着いてくるって噂通り彼女は僕の誘いに乗ってくれた。

蛍光灯の下ではなく月明かりの下で僕の目に映る彼女は凄く儚くて美しく見えた。
絡み合う舌はほんのり暖かくて気持ちがいい。貪るように唇を重ねて彼女の身体を隠す邪魔なものをゆっくりと剥ぎ取る。本当はむしり取りたい衝動に駆られるけど、ここは焦らすようにゆっくり丁寧に釦を一つづつ外してゆく。
ちらりとこちらを見る奈緒ちゃんの目は、『早く』って僕に訴えてるように見えるけど気づかないフリをするんだ。

見えてきた素肌は陶器みたいに白くて絹みたいに柔らかい。早くこの肌を噛み破ってその下にある血管から血を啜りたいという本能に流されそうになるけど、ここはガマン。

うっとりとした表情を浮かべた彼女は少し頬を赤らめながら僕に『好きにして!』とせがむ。
あの凛とした瞳が閉じられて、長い睫毛は少し震えながら影を落としている。口から漏れるのは普段より少しだけ甲高い喘ぎ声だけ。
きっとキミなら大丈夫。僕が、僕だけしか教えてあげられない快感をキミに刻んであげる。
白く少し汗ばんだ首筋に牙を立てる。
痛い!と言う悲鳴交じりの声をあげ、眉根を寄せて苦悶の表情を浮かべる奈緒ちゃんは、僕の想像以上に征服欲を見たしてくれる。
一瞬驚いた表情を浮かべたけど、特に僕に何かを言うこともなく彼女の目は再び閉じられる。
そっか、気持ちいいんだね。じゃあもっと。もっとキミを味わったことのない世界に連れて行ってあげる。
自然と弧を描く唇。さっきまでよりも強く、牙を彼女に突き立てるさっきよりも少し血が甘くなったような気がした。

奈緒ちゃんの胎内も最高だったよ。
とっても暖かくて、僕にもっとって言うように絡みついてくる。
嬌声をあげ僕にしがみつき、快感を貪るように腰を押し付けてくる彼女はとても可愛いと思う。

「もっと気持ちよくしてあげる。たどり着くのは天国じゃなくて地獄かもだけど、ね。」
快楽の虜になっている彼女の耳に僕の声が聞こえたのかは分からない。
抱き寄せた肩に牙を再び立てると、奈緒ちゃんのナカはさっきよりもボクを締め付けてくる。口から漏れるのは、悲鳴じゃなくて喘ぎ声と荒い呼吸だけだった。



「…どうだった?」
短い呼吸を繰り返す彼女の汗ばんだ髪を撫でながらそう尋ねる。
「…首痛い。貧血?クラクラする。」
恨めしそうな表情を浮かべ僕の咬んだ後を指でなぞる。げっ、まだ血が出てるじゃんと、彼女は指に着いた自分の血液を忌々しそうに見つめる。

「もったいないから、頂戴。」
彼女の指先に着いた血は酸化してるけど、やっぱりさっきと同じ味だった。

(ところで彼女はどうして僕の存在に驚いたり、怯えたりしないんだろう?)








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テーマ「人外ファンタジー」
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