それは数日前の終業式の出来事。 「ねぇライトはさ、イベントとか大事にするタイプ?」 「それはどういう意味?…奈緒ちゃんもしかして誕生日とか?んふ、ボクにお祝いして欲しいの?」 「残念ながら誕生日じゃないよ。ほら、もうすぐクリスマスじゃん?」 「あぁ、そういうコトね。ねぇ、奈緒ちゃんはちょっとだけ…ううん、結構オバカさんなのかな?どうしてボクがカミサマの誕生日なんてお祝いしなきゃいけないのさ?」 教室へと戻る廊下の途中でライトに会い、何気なく話していた会話。世間話程度のつもりだったのに、どうやら彼のお気には召さなかったようだ。 「そういえば、そうだね…まぁならいいや。」 「いいやって何が?」 「クリスマス、せっかく一緒に過ごそうかと思ったけどそれなら他の「やっぱりバカだね。バカなだけじゃなくてビッチなんて本当に奈緒ちゃんはボクがいないと、なーんにもわからないんだね。」 他人が見ればカレシとカノジョがじゃれてるようにしか見えないように、ライトは私を壁際にやんわりと押しやるがこちらに向けられている瞳には狂気が混じっている。痴話喧嘩なんて可愛いもんじゃない。 「…それじゃ」 「クリスマスだとかなんとか言ってビッチな奈緒ちゃんが浮かれて悪いコトしないように、ボクが監視してあげる。一緒にいれることに変わりはないんだからいいでしょ?」 「それは違うような…」 「違わない。」 間髪入れずに返ってきた声の低さに私は息を飲む。…あぁこれはやばい。 「んふ、どうしてだまっちゃうの?ねぇ、ボクと一緒に過ごそうよ?ねっ?」 いつものトーンで周りに聞こえるように話すライトの声に私は頷くことしかできなかった。 ************** そして訪れた24日。 行かないでおこうかとも思ったけど、アイツのことだからどんな手を使ってでも私を探しだすだろうと思い言われた通りの待ち合わせ場所に向かうと既に彼はソコにいた。 「じゃあ行こうか。」 そう言って差し出された手をつなぐ。冷たい掌が私を繋ぎ止める鎖のように感じる。きっとこの手はどんなことをしても振り切れない。 「どうしたのー?今日は静かなんだね?」 「監禁するって言った相手ににこやかに話すほど私人間できてないから。」 「そんなこと言っちゃって、ちゃーんと待ち合わせ場所に来る奈緒ちゃんはボクとずっと一緒に居れるのが嬉しいんでしょ?」 「…」 「んふふ。無言は肯定ってコトだよねぇ〜たーっぷり可愛がってあげるよ。だって、セイナルヨルなんでしょ?」 ニヤリと弧を描く唇。 その笑顔に私は何も答えられなかった。 いつもように案内されたライトの部屋は、いつもとなんら変わりはなかった。 「ねぇねぇ、とりあえずこっちきてよ。」 言われた通りにベッドの隣に座ると、「目をつぶって」というライト。 「絶対ろくでもないことするでしょ?」 「ひどいなー決めつけはよくないよ。もしかしたら、奈緒ちゃんが喜ぶことかもしれないじゃないか。」 「その言い方は絶対に違う。…わかった、これでいい?」 睨み付けたところで飄々とした笑みを返されるだけなのはわかってる。ムカツクけど言われた通りに目を瞑る。 「いいよ、って言うまであけちゃダメだよ。」 「わかったってば。」 なげやりな返事に納得してくれたのかライトはそれ以上は何も言わない。 ガサガサという音が聞こえる。何かを探してるっていうのはわかる。あっ、ベッドのスプリングが跳ねた。と言うことは隣に今座ったんだ。 腕を掴まれる感触。…何が始まるの?と、ドキドキと高鳴る胸。 その瞬間耳に聞こえたガチャリという音と、手首に感じる冷たい感触。 「いいよ、目開けてみて。」 その声を合図に瞳を開くとぼんやりとした視界には、満足そうに笑うライトの顔がまず映る。そっと下を見ると、安っぽい光を放つ銀色の手錠。 「ちょっと!これなによ!!」 「んふふ。やっぱ監禁って言ったら手錠でしょ?ほらほら奈緒ちゃんこっちこっち。」 無理矢理引っ張られる手。その反動でベッドに倒れ込んだ私の耳に聞こえるガチャリというあの音。 「これで完璧。」 その声の聞こえる方向を見るとベッドの枠に繋がれた手錠の片方が見える。つまり私はいまこのベッドに繋がれてるってことだ。 「離してくれたりとか、する?」 「そうだねー」 横たわる私の上に覆いかぶさってきたライトの声が耳元で響く。 「今晩ボクのスキにして、それで夜が明けたら外してあげる。きっとその頃にはもう奈緒ちゃんに立ち上がる気力なんて残ってないだろうけどね。」 ペロリと首筋を這う舌の感触に思わず目を閉じる。 「気持ちよかった?んふふ、いっぱいシてあげるよ。全身を舐め回して、いっぱい奈緒ちゃんをよがらせて、そして興奮しきったキミの血をいろんな所から吸って、そして…」 気を失うまで抱いてあげる。 その声が聞こえた瞬間に感じる皮膚を突き破る感触と、身体中の血が沸騰するみたいな熱い感覚。 「っ…」 「んっ…もしかして繋がれて興奮してる?」 私は興奮しているのか…それすらわからない。けれどこの状態と彼の言葉に私の胸が高鳴ったのは事実だ。 「すっごく奈緒ちゃんの血熱くなってっ…んっ、火傷しちゃいそうだよ…もっと…もっとボクに興奮してっ…その熱い血っ…いっぱいボクに頂戴?」 首筋を舐める舌に付いた赤は紛れも無い私の体から流れだした血液。 ツーっと流れるそれがいつもより熱く感じるのはどうしてなんだろう? 「もったいないなぁ…」 流れ落ちそうな紅をなめとる彼の舌も熱く感じるのは、何故? 「やっぱりでもココがいいな…」 セーターをまくり上げ乱暴に下着を剥ぎ取るように私の胸を露わにして、その感触を楽しむように揉みしだきながら、ゆっくりと牙を突き刺す。 「いっ…!」 痛いとすら口にできない感触が私の体を貫く。吸血行為には慣れてるけれどどうしても心臓の上から吸血されるこの痛みだけはどうしてもなれない。 「…ねぇ、すごく心臓が脈打ってるよ?ボクにいっぱい飲んで欲しいの?」 開いた穴からあふれる血液を眺めながら彼は鼓動に耳を傾ける。 「そんなワケない…っ、あんっ…」 言い返そうとした私を襲うのは胸の飾りに血を塗りたくるライトの指の感触による快感だった。 「こうやって、奈緒ちゃんの体から流れてる血をいっぱいいろんな所に塗って綺麗に舐め取ろうかな?そうすればボクも楽しいしキミも気持ちイイし一石二鳥でしょ?」 傷痕を思い切り押し血を溢れさせられるその痛みに私は、眉根を寄せ荒々しい呼吸をすることしかできない。 「んふふ。そうしようっか?夜はまだ始まったばかりだね。メリークリスマス、奈緒ちゃん。キミに血塗られた聖夜を贈るよ。」 Merry christmas!2012 |