Lesson16




「ねぇさっきの男とはこれまでに何回ヤッたの?どんな風に奈緒ちゃんのことを抱くの?それでビッチなきみは何回くらいイかされたの?」

私の手を頭上に片手で軽々とひねりあげ、体の上に馬乗りになったライトは楽しそうに私にそう尋問する。

「…数えたことない。べつに普通だよ、アブノーマルなこととかしないし。…イッたりしてない。」

嘘を付いたところできっとライトにはバレてしまう、だったら…と私は素直に話す。言い訳がましくなるけれど、ライトとするセックスに何かの不満があるとかそういう訳ではないんだよと、そう最後に付け足す。

「ふーん。じゃあどうして『ライトくん抱いて』って言わないの?」

そんなの言えないよ。だって、ライトが私に与える快感と妙に居心地がいいその隣の位置がなくなることに恐怖を覚えてるんだよ?だから、私は他の男とシテみたらちょっとは前の私に戻れるんじゃないのかな?そう思って、別に好きでもなんでもない男を誘ったんだもん。まぁ、結局気持ちが変わることもなかったしそれにライトにバレてしまったんだから、本当に意味がない。

「どうしてなんにも答えないの?…やっぱりボクに不満があるんでしょ?…ほら、早く言いなよ。今ならまだ許してあげるから。」

薄笑いを浮かべながら彼の顔が私の首筋に近づく。鎖骨に感じる髪の感触とその匂いにどこか安心する自分に笑いが出そうになる。

「…許してくれないでもいいよ。血も好きなだけ吸ってもいい。」

ただの人間の私はアナタの中でどれくらいの存在価値があるのかなんて、私にはまったくわからない。
けど、それでも私の血を求めてくれて、嫉妬してくれるのなら、どんな罰を与えられても、私は構わない。

「変な奈緒ちゃん。ねぇ、血を吸って欲しいならボクにお願いしてみてよ。」

「…吸いたくないなら吸わなくていいよ。」

いつの間にか自由になっていた腕をライトの背中に回しそっと抱きしめ私の体に密着させる。

「んふ。大胆だね。なぁに?血を吸われたんじゃなくて抱いて欲しいの?」

「…そうだね。どっちかと言えば抱いて欲しいかな?」

さっきシタんだよね?なのにまだシタイなんて本当にキミはいやらしい女の子だね、そういってライトは楽しそうに笑う。うん、これでいい。私の心の痛みとか葛藤とかそういう汚いモノはこの人には知られたくないのだから。バレてしまえば、きっとめんどくさいと私を捨てるんだろうから。

「そうだよ、知ってるでしょ?ねぇ、ライト。ライトがしたいようにしていいよ?」

そう言って彼の唇に触れるだけのキスを何度も私は繰り返す。幾度目かのキスで彼は私の頭を抑え舌を私の中に入れてくる。その舌先に私も同じように舌を絡ませる。

ピチャピチャという唾液の絡まる音が脳内を支配する。ただキスしてるだけなのにどうしてこんなに興奮するんだろう?なんて思いながら。

そんな私の思考を遮るように、唇に走る痛み。…あぁ唇を噛まれたんだ、広がる鉄の味を感じながらぼんやりと考える。唾液が含まれた血液を美味しそうにライトは舌で舐めとっている。

「ねぇ、血って美味しいの?」

「ボクはヴァンパイアだからね。奈緒ちゃんボクの血舐めてみる?」

「うん。」

それはほんのキマグレだった。強いて言うならヴァンパイアの真似事をしてみたいという好奇心。

「んふ、いいよ。じゃあ特別にヴァンパイアの血召し上がれ?」

自分の牙でライトは自らの手首に噛み付き、溢れてきたその血を私は舌でペロペロと舐める。…うぇ、不味い。不味いというか血の味しかしない。

「ねぇもっと舐めて。なんなら、噛み付いたっていいんだよ。…血を舐め取られるのって案外気持ちいいんだね。今まで知らなかったなぁ…」

言われた通りカプリと腕を噛んでみるけど、あいにく私には牙があるわけじゃないから噛み跡が残り開いている傷口から少しだけ血が押し出されるだけだった。


「ねぇボクの血美味しい?」

「…血の味しかしない。」

「当たり前でしょ。血を舐めたんだから。」

そう言って体制が入れ替わり、目にうつるのはライトと天井だけ。

「今度はボクが楽しむ番だよね?…ちがった、ビッチな奈緒ちゃんを躾るんだった。」

着ていたワンピースを乱暴に脱がし、下着だけの姿になった私をライトは見下ろす。

「ココ、キスマーク付いてる。ムカツクなぁ、ボクが消してあげるよ。」

ちょうど胸のあたりにあるキスマークの上に突き立てられるライトの牙。そして傷口からあふれだす血を牙を立てたまま彼は啜り続ける。

「…っ、あっ・・」

「なに?血を吸われて感じるの?そうだよね、キミは痛みも快感に変えられる女の子だもんね。」

パチンと音を立て外されるブラジャー。現れた胸を彼はゆっくりと揉みしだく。

「でもー気持ちイイほうが好きでしょ?」

チュっと音を立てながら私の胸の飾りを口に含みゆっくりと舌で転がす。

「んっ…うんっ…気持ちいいほうが…スキ…っ」

ライトの頭を優しく撫でると、さっきよりもきつくソコをチュパチュパと音を立てながら彼は吸う。

「んふ、乳首勃っちゃったね。気持ちいいんだ?でもねーこれはオシオキだから、感じちゃダメだよ?今から奈緒ちゃんはボクが何をしても声をあげちゃダメだからね。」

そう言って彼は私の脇腹を今度は舌でツゥーっとなぞる。私は唇を噛み締めて、体を震わせその刺激に耐える。


そのままライトの唇は太ももの付け根へと向かい、ももの内側にゆっくりと牙を立てる。

「…っ」

「んふふ、痛い?でもね、体は【気持ちいい】みたいだよ?さっきより血が甘くなってる。」

ジュルりと音を立てながら彼の唇は私の血を啜り続ける。唇のはしに少しだけついている赤がすごく綺麗に見える。

「いいね、その顔。痛いし気持ちいいのにソレを声にだして発散できなくて、苦痛と快感にただ悶えてますって顔。…すごい興奮する。」

もっとその顔をボクにいっぱい見せて、そう言って唇が触れたのは私の足首だった。

「アキレス腱だっけ?このあたり肉がないからきっと牙を突き立てたら痛いだろうなぁ…我慢してね。」

ズブリと牙が食い込む感触が今まで噛まれたどの部位よりも痛覚を刺激する。

歯を食いしばり体に力を入れて、私は叫び声をあげるのをひたすら我慢するが、発散できない痛みが体内に蓄積してゆき今にも口から悲鳴が溢れそう。

「意外にも我慢強いんだねぇ…」

つまんないなぁー、じゃあこれはどう?

ズキズキと痛む傷跡に気を取られていると、ゆっくりとライトの舌はさっきとは180度違う快楽を与えるようにゆっくりと私の足を這っていく。

「‥やぁ‥っ!」

「んふ。声出しちゃったね?奈緒ちゃんは痛みよりも快楽に従順なんだぁ…さすがはビッチ。」

一度漏れてしまった声を止める方法がわからなくなったみたいに私の口は、喘ぎ声と荒い呼吸を繰り返すことしかできない。反論したいのに言葉をうまく口に出せない。

「…ボクさー『声だしちゃダメ』って言ったよね?…残念。声だしちゃったからもうココでおしまいだよー。」

私の上から降りて、何事もなかったかのように私にさっきまで着ていた服を投げつける。

「ほら、もうおしまいだから。早くそれ着たら?…奈緒ちゃんがその格好でいたいって言うんだったら別にいいんだけどねー」

中途半端な快楽を与えられた私の体は、自分でもわけが分からないくらいに火照っている。

「…どうして?途中で終わりなの?」

「あのねーコレは【オシオキ】だよ?どうしてボクが君を気持ちよくさせてあげなきゃいけないワケ?…どうしてもシたいって言うんだったら、奈緒ちゃんがボクをその気にさせてよ。そうしたら、ボク我慢できなくなっちゃって抱きたくなっちゃうかもだよー?」

疼く体をもてあます私の中に彼の言葉が染みこんでゆく。そうか、私がその気にさせればいいのか。



「わかったよ、ライト。ねぇ私のスキにしていいんだよね?」

「もちろんだよ。…どんなことシテくれるの?」

ニヤリと笑い、「それはいえないよ。」と答えて、今度はさっきとは逆に私がライトを押し倒す。

「んふ。いいね、その顔…淫売って感じで素敵だよ。」

「ありがとう。じゃあ、その売女の下で今からいっぱい喘いでもらうから、ね?」

そう言って彼のシャツに手をのばす私の姿を彼が懐かしそうな目で見ていたことなんて、その時の私は気がついてなかったんだ。








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