そうして過ぎていく日々は、今までの人生であんまり味わったことのない、甘い日々とも言えるような日常だった。まるでぬるま湯につかっているみたいだな、と自分のことなのに他人ごとの様にぼんやりと考える。 …本当にこのままでいいのかな?ライトの言葉に流されていいの?卒業までってことは、卒業すれば終わりだよね。 以前ならせいせいすると思っただろうけど、今はなんだかあと1年ちょっとのその時間が惜しいと思ってしまう。 こんなの、私じゃない。…このままズルズルとライトの傍にいたら私は彼に依存して、彼がいないと生きられないそんなどうしょうもない女に成り下がってしまう未来が待っているような気がしてならない。 すごく怖い。どうしたらいいかわからない。だから私は…現実から逃避する選択をすることにしたんだ。 とりあえず、ライトには具合が悪いから学校を休むとメールを送り、手元の携帯電話にあるアドレスにメールを送る。 【今夜暇なら会いませんか?】と。 ************* 「ボク、今日はガッコーお休みするねー」 「…勝手にして下さい。知りませんからね。」 本当にアナタもだらしないですね、と軽蔑の眼差しを向けるレイジににこやかに手を振ると溜息を零しながら彼は車に乗り込み学校へと向かっていった。 「…具合悪いって本当かなぁ?…ねぇ、奈緒ちゃんわかるよね?あの子の様子を見てきて欲しいんだけど。」 使い魔に命令を伝え、ボクは誰もいないリビングのソファーに1人座る。まぁ本当ならそのほうがいいけど…最近の彼女は時々どこか遠くを見ているような気がする。ボクのとなりにいるのに、いないみたいな…なんて言ったらいいかわからないけど、心ここにあらず?そんな表情をしているんだよね。 だから、もしかしたら…なんていう嫌な予感はだいたい当たるもんなんだよね。嫌になっちゃうよ。使い魔が教えてくれたんだ… 【奈緒さんなら男性と2人で出かけていましたよ。】と。 相変わらずビッチだなー欲求不満ならボクに言ってくれれば、一晩中奈緒ちゃんのこと可愛がってあげるのに。 …それともボクじゃダメってこと?今会ってる男のほうがキミを満足させられるってこと? 彼女はまるで、大好きで大嫌いなあの人みたいだ。そう考え始めると、ボクの心にどす黒い感情がふつふつと湧き上がる。 あれだけ可愛がって優しくしていつも傍にいてあげたのに、それは奈緒ちゃんには逆効果だった?それとももっと束縛してボクしか見えないようにしなきゃいけなかった? 「直接本人に聞けばいい話だよね。…待っててね、今行くから」 家を飛び出し向かったのは、もちろん彼女と男がいるらしい場所。 どんなオシオキをしてあげようか?誰にも相手にされないようにあの可愛い顔をズタズタにしてあげようか。それとも、どこにも行けないようにウチに監禁しちゃおうか。 …彼女はどんな言い訳をするんだろうか?それともいつもと変わらない様子でボクに話しかけてくるのだろうか。前者だったらまだいいけど、後者だったらボクは彼女をその場で殺しちゃうかもしれないな‥なんて考えながら歩けば目的地にはもう着いてしまった。 きらびやかな下品なネオンが輝くホテル街。その中の一つから仲良さそうに出てくる男女の片方は…やっぱり奈緒ちゃんだった。 一緒にいるのは案外普通の男、デレデレとした顔で彼女の顔を見つめる男。…何アイツ。イライラする。彼女もイライラするのか少しめんどくさそうな表情でその男をあしらってる。 手を振りほどき1人夜道にヒールの音を響かせながら歩いてくる奈緒ちゃんは、少しずつボクがいる所に近づいてくる。 「こんばんはー具合はどう?」 「…ライト?」 「ねぇ何してたの?…さっきまで一緒にいた男は奈緒ちゃんをたっぷり可愛がってくれたの?ねぇ、どんな風にキミのこと抱いたの?…ゆっくり聞かせてくれるよね?」 彼女はうつむき地面をじっと見つめて一言も言葉を発しない。 「なんで黙ってるの?ボクに罪悪感感じてくれてるの?ねぇねぇ奈緒ちゃんの口から聞きたいなぁー。言い訳とはいらないよ。」 「それ、は…」 「なぁに?ボク1人じゃ満足出来ない?言ってくれたら前にシタみたいにアヤトくんと一緒に可愛がってあげたのに。アヤトくんが嫌ならこの前、奈緒ちゃんが手を出そうとしてたスバルくんでもいいけどね。」 「そういう訳じゃなくて」 「言い訳はいらないって言ったよね。…おバカさんでビッチな奈緒ちゃんに選択肢をあげるよ。 ここでボクに血を全部吸われて死ぬのと、とりあえずボクについてきてボクのオネガイ聞くのどっちがいい?」 彼女の肩を掴むとビクッと震える身体。ボクが怒ってるってことは分かってくれてるんだね。嬉しいなぁ。 「…ついてくから。」 絞り出すような彼女の声がボクの加虐心に火を付ける。あんなに強気な彼女がボクに服従しているなんて楽しくて仕方ないよ…! 「んふ。よかった、ボクも奈緒ちゃんを殺したりなんてしたくないから、ねっ。それじゃ行こうか。」 彼女の身体を抱きしめて瞬間移動。もちろん行き先はボクの部屋。 今夜はキミをひたすら虐めてあげるよ。その身体が誰のもので、キミが従うべきは誰なのかちゃーんと教えてあげるから、ねっ? |