奈緒ちゃんを探して学校の中をウロウロして、最終的にたどり着いたのは屋上。 その扉を開いた先で、ボクが目にしたのは、スバルくんに覆いかぶさりキスしようとしていた彼女の姿。 「奈緒ちゃんみーつけた。」 そんなボクの声に、奈緒ちゃんはめんどくさそうな表情でこちらを振り返り 「いいところなんだから邪魔しないでくれる?」 と、スバルくんの髪を触りながら笑う。 何がなんだかよくわからないと言った表情で彼女とボクを交互に見つめるスバルくん。 こっちを見てと、スバルくんの顔を自分の方へと向けようとする奈緒ちゃん。 なにこの光景。もしかしてボクがお邪魔虫?…イラつく。 「えー、恋人の前で浮気しちゃうの?本当に奈緒ちゃんはどうしょうもないビッチちゃんなんだね。ごめんねースバルくん。この子は、ボクの彼女だからー。」 平然を装いつつ、スバルくんへ伸びた彼女の手をゆっくりと掴み、彼女を立ち上がらせる。 「別に俺は何にもしてないからな!というか、俺を巻き込むなよ!おい、ライト!その女連れてさっさとここから出て行け。」 昼寝の邪魔された挙句この仕打ちは何なんだよ!と、イライラとした様子でこちらを睨みつけてくるスバルくん。これはヤバい。下手したら屋上が破壊されちゃうよ。 「オッケー分かったよ。じゃあね、邪魔してごめんねー」 「ちょっと…!またねースバルくん。」 状況がよく分かってないのか、にこやかに手を振る奈緒ちゃんの手を引っ張って屋上を後にしたのだった。 *********** 屋上から下る階段の踊り場で彼女の手を少し力をこめてひっぱり、その体を壁へと押し付ける。 「ねぇ、奈緒ちゃん。どういうつもりで、スバルくんに手を出そうとしたの?」 「なんでって…楽しそうだったからよ。」 そんなのただの思いつきよ、なぁに?もしかしてライトってばヤキモチ?と彼女はボクを見つめながらニヤニヤと笑う。 「もしそうだって言ったら、奈緒ちゃんはどうしてくれるの?ボクだけだよーって言って抱きしめてくれる?それとも、ウザいってボクを突き放すの?」 「別にどうもしない。だいたい私達が付き合ってるっていうのだって単なるライトの思いつきが発端でしょ?それに私がちょっと乗ってるだけじゃない。」 「嘘もつき続ければいつか本当になるかもしれないよ?」 「私達に限ってそれはないんじゃない?」 「そう?そんなことないよ。実際ボクは、こうやって奈緒ちゃんを探したのは、もしかしたらボクの恋心のハジマリかもしれないじゃない。」 言い合う僕達。そんな2人の会話を裂くように聞こえた誰のものかわからない声。 『ねぇあの2人どれくらい続くとおもう?』 『うーん。もって1週間じゃない?だって、ライトくんはともかく相手はあの榊原だよ?絶対持たないって。』 『だよねー』 少しづつ遠くなる声。多分通り過ぎたであろうと思われる瞬間に、2人目を見合わせ小さく笑う。 「ねぇさっきのどう思う?ボクたちすぐに別れちゃうんだって。ひどいよね?こんな所で痴話喧嘩しちゃうくらい仲良しさんなのにね。」 「言いたいヤツには言わせておけばいいってば。…変な尾ひれとかつくのは嫌だけどさ、人の口に戸口は立てられないからね。なんなら、彼女たちの予想通り1週間で別れたことにする?」 「そんな思い通りになっちゃ楽しくないよ。…ねぇどうせだったら…」 彼女の耳元に唇を寄せてひそひそ話。 「性格悪いねー逆巻ライトくんは。」 「奈緒ちゃんほどじゃないよ。付き合い始めた初日に彼氏の弟を誘惑するような子に言われたくないなぁ。」 「まぁ性格が歪んでんのはお互い様ってことで。…でも本当に?」 少しだけ不安げに彼女の瞳が揺れる。奈緒ちゃんもこんな表情をすることがあるんだとボクは思ってしまう。だって、ボクは気が強い彼女と快楽に従順な彼女しか知らないから。 「んふ。どうせだったら、見せつけてあげたらいいんだよ。」 言いたい奴には言わせておいていいんでしょ?と奈緒ちゃんの髪を撫でながらにっこりと微笑んでみると彼女は、まぁいいかと、とまどいながらも頷く。 …どうして、ボクはこんなコトしようと思いついたんだろう。 心の中に芽生え始めた独占欲。そんなものがボクの中にあるなんてきっと彼女は思いもしないし、彼女の中にボクに対して、そんなモノはないだろう。 そんなのわかりきったことなのに心だけが無性に焦るんだ。 |