Lesson11



彼女のことは、ほとんど知らない。奈緒ちゃんに求めるのは抱き心地がいい身体と妙に甘ったるい血だけ、そのつもりだった。
ちょっと遊ぶには、彼女のような女の子が一番だ。男が女に何を求めているか、それを理解できているから面倒じゃない。

だから手を出したつもりだった。だけど、キモチというものは思った通りにならないから厄介だ。

『それじゃあね、ライトくん。』

軽く手を振り、振り返ることなく教室へと奈緒ちゃんは入っていく。誰とも目を合わせず、机に向かい1人静かに寝たふりを始めてる。

「ねぇ、ライトくん…」
後ろから控えめな声が聞こえ、振り向くと2人の女の子が立っていて遠慮がちにボクに質問をぶつけてきたのだ。

「あの…榊原さんと付き合ってるの?さっきこの子が手をつないで歩いてるのを見たって…」

「付き合ってるよ、奈緒ちゃんはボクの彼女だよ。」

今にも泣き出しそうな顔をしたその子にボクは笑顔でそう答えた。すると、その子の瞳からぽろぽろと涙があふれる。…こんな風に、奈緒ちゃんは何かに涙をながすことがあるのだろうか?なんて、そんなコトをボクは考えてしまう。

「…そうなんですね。でも、榊原さんってその…「男遊びが激しいって?…知ってるよ、それも含めて彼女だから、ね?」

精一杯の勇気を振り絞って口にしたとおもわれる忠告をボクはばっさりと否定してあげる。そう、そんなことわかってる。それにだいたいボクと彼女の【お付き合い】はしょせんゴッコ遊びだ。ままごとの延長線上にあるようなものなのだ。

「この子はライトくんが傷つくんじゃないのかって…心配して言ってるんだよ?」
隣にいたもう一人の女の子がボクに今度はそうフォローを入れてくる。

「心配してくれてありがとう。でもねーボク、寝ても覚めても奈緒のことで頭がいっぱいなんだ。…それに僕も彼女とそう変わらないような男だよ?」

そうだ、僕と彼女の違いは性別と種族の違い。それ以外はきっとあまりないのだから。

「…行こう。」

隣でいまだ泣きじゃくる女の子をつれて、その子ば僕をひと睨みして自分たちの教室の方へと走っていく。…僕も自分のクラスに行こう。彼女の寝たふりした背中をちらりとひと目みて、再び足を進めたのだった。



昼休みが終わる頃には僕と彼女が付き合い始めたらしいという噂は2年の間では知らない人がいないくらいのレベルまで広がっているようだった。


「榊原さんいる?」

「奈緒なら、昼休みになった瞬間どっかに行ったよ?逆巻くん一緒じゃないの?てっきりそっちに行ったのかと思ってたんだけど」

戻ってきたら来たこと伝えておこうか?…そう、隣の席の女の子が優しくボクにいってくれたけど「いいよ、探してみる」と断る。

多分、彼女は休み時間が終わるまでここにもどってくることはないだろう。ボクに絡まれるのがめんどくさくて逃げことなんて、いとも簡単に理解できた。

「どこに行ったのかなー?」

携帯を取り出し、この前無理やり聴きだした番号に電話をかけるけれど、コール音が耳に響くだけで彼女がでることはなかった。

「恋人ごっこの次は、鬼ごっこ?…本当に、子供みたいな遊びが好きだなー奈緒ちゃんは」

絶対服従を示す女の子よりは、随分と僕を楽しませてくれるけどね。





彼女のことはほとんど知らない。だけど、今日知ったよ。

奈緒ちゃんはボクと遊ぶのが大好きなんだってね。








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テーマ「人外ファンタジー」
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