「ねぇねぇ、奈緒ちゃん。今日はなんの日かわかる?」 ひたすら鳴り続ける携帯電話が夢の世界から現実に私を引きずり戻す。あんまり覚醒しない声で『もしもし』と電話にでると、「おはよービッチちゃん。」という無駄に明るいライトの声だった。そして冒頭の意味の分からない質問をされたのだった。 「知らない。…誕生日?だったらおめでとう。じゃあね。」 答えを返して一方的に電話を切り再び眠りにつこうとすると、再び携帯が鳴り始める。…出なかったら、さっきみたいにずっと着信が続くんだろうな…仕方ない。ライトの話を聞いてあげよう。そんな仏心で通話ボタンを押す。 「しつこ「んもう。途中で切っちゃうなんてひどいなぁ。今日なんの日か分かった?正解したら素敵なプレゼント、もしハズレだったらお仕置きだよー。」 「だから、わかんないってば!はいはい、…お仕置きでもなんでもいいから、私寝るし。」 「お仕置きしていいの?んふ。じゃあまた夜にでも電話するからちゃんと出てね。」 じゃないともっとひどいお仕置きしちゃうから。なんて声が聞こえた気がするけど、眠すぎて理解できないから「わかった。」と答えると満足したのか電話は切れ、私はそのまま再び眠りについたのだった。 *********************** Pipipipi…携帯の着信音が聞こえる。ゆっくりと目を開けると日がだいぶ傾いていた。枕元でフェイド・アウトしていた携帯を拾い上げると『逆巻ライト』の名前が表示されていた。 …そういえば、昼間に電話で話したような…いやあれは夢だっけ?まぁいいや。とりあえずかけ直してみればわかる、そう思い履歴からヤツの番号へと発信すると数コールの後、「もしもーし。やっと起きたの?」といういつものライトの声が聞こえた。 「ねぇ、私今日あんたと話した?」 「うん、お昼にちょっとだけね。もしかして覚えてないの?」 「うーん。話したような気がするけど内容まではちょっとね。」 「そっか、起きたらうちに来てくれるって約束だったんだよね。だから、早く準備して来て、待ってるから。」 「ちょ「じゃ、そういうことで。着いたら連絡してねー。」 そんなの知らないと言おうとした瞬間途切れた通話。…行かなかったら明日学校で痛い目に合いそうだ。…仕方ない、準備しよう。 ノロノロと起き上がり、用意を始めて家をでたのはそれから30分後。途中でよったコンビニで「今日はボッキー&プリッツの日」と書かれたポップが目に入ったのでとりあえず一つ購入して、ライトの待つ逆巻家へと急いだのだった。 「いらっしゃーい」 「どうも。…それでなんの用?」 「本当にボクがお話したこと一つも覚えてないんだね。頑張って昼間に起きてせっかく連絡したのに、奈緒ちゃんってばひどいなー」 「…よくわかんないけどごめん。これ、あげるし許して。」 「なにくれるの?…ねぇ本当に電話の内容覚えてないの?」 「まったく。」 じゃあ、睡眠学習?ボク今日はなんの日でしょう?って、電話したんだよ。知らないって言ってたのにわかってるじゃんと、ライトは笑う。 「コンビニ入るまで忘れてた。…なんか関係あるの?」 「めちゃくちゃ関係あるよ。だって、今からコレ使って奈緒ちゃんをお仕置きしようと思ってたんだもん。」 さっきあげた赤い箱をもって、お菓子に似合わない卑猥な笑を浮かべるライト。 「ポッキーゲームとかそんな可愛いことじゃないよ、ね?」 「さすが、奈緒ちゃんよく分かってる。そういうのはキミだって望んでないでしょ?」 「…別になにも望んでないけど。」 「んふ。今からたっぷり食べさせてあげるね。きっとコーティングされたチョコが奈緒ちゃんの熱で溶けてナカがチョコまみれになるだろうなぁ…あとでボクのについたチョコキレイになめさせてあげるから。ねっ?うれしいでしょ?」 恍惚とした表情でなにかを想像しているライト。わかるけど、わかりたくない。 というかむしろそんなのごめんだ。 「無理。そんなことされるくらいなら、アンタの口ポッキー突っ込んで塞いでやるわよ。この変態!!」 「ほんとはうれしいくせにー。ほら、早くボクの部屋に行こう?それとも、リビングでする?」 バカにつける薬はないって言うけど、変態につける薬もない。 「リビングでもアンタの部屋でもしない。…普通にお菓子は食べたい。」 「そう?じゃあ、ぼくのポッk「はいはい。じゃあそれでいいから。」 コレ以上こんなところでこんな卑猥な会話を繰り広げるのはごめんだ。今度学校で逆巻兄弟に会った時に『ライトにポッキー突っ込まれた人』とか言われそうだ。 そんなのご勘弁願いたい。 「やっと素直になったね。…じゃ行こう。」 階段を登り部屋へとむかうライトの後ろを、ため息を一つこぼして私はついていくのだった。 (ねぇねぇ、何本入るか挑戦してみようよ?) (本気で黙れ。この変態。) |