Lesson9




「…喉かわいた」

目が覚めたのは、無駄に広いベッドの上、隣では逆巻ライトが気持ちよさそうに寝息を立てている。棺桶あるんだから、ヴァンパイアらしくそっちで寝ればいいのに。

「とりあえず、服着なきゃ。」

この家の住人はきっとみなさんこんな午後の麗らかな日差しの中、未だ睡眠中だろう。誰にも見つからずに家を出るなら、今がチャンス。
昨日案内された時に部屋から玄関までの道は覚えた、だから大丈夫。

そう自分に言い聞かせながら、散乱した衣服を広い集め身に纏っていく。髪がボサボサなのに気がついて、手櫛と持っていたシュシュでどうにか外に出れる感じに結く。

「…もう帰っちゃうの?」

いきなり聞こえた声にビクッと方を震わせ後ろを振り向くと、半分くらいしか覚醒してない感じのライトがこちらを見ている。

「用は済んだでしょ?」

「うーん…済んだような、済んでないような…どうせ学校行くでしょ?だったら、ウチから一緒に行こうよ。それまで、ほら。」

ここで一緒に寝ようよ、そう言ってさっき私が寝ていたあたりをポンポンと叩く。

「着替えたいから、無理。」

「…昨日いっぱい濡らしちゃったもんね。それに僕とアヤトくんが奈緒ちゃんのナカにたっぷり出したし。」

「そういうこと。お風呂にも入りたいし。」

「お風呂なら、そこにあるよ?着替えも準備させるし、もう一回僕と一緒に寝ようよ。」

「アンタが寝るって言うといやらしい意味にしかとれないんだけど。」

「えっ?そっちがいいの?…昨日あんなにシテあげたのにまだ物足りないの?…そういうことだったらそれでもいいけど、「違うから。」僕もそっちの意味では言ってないから。」

「とりあえずさ、」

「何?」

「…水飲みたいんだけど。」

「ちょっと待ってて。」

何か持ってくるよ、そんな事をいいながら、ライトはのろのろと起き上がり、服を着るとそういって部屋を後にした。

いま…『帰る』といえば、帰れたはず。なのに、どうして私はココにとどまろうとしてるんだろう。

目についた棺桶の上に座り、一人考える。昨日のコトは不可抗力だとしても、今は無理やりでもここから出れたはずだ。なのに、無意味な会話をしてその言葉に従っている。きっと私はこのまま彼のペースに飲まれて、結局ここから登校するのだろう。

「…めんどくさ。」

「どうしたのー?…はい、コレ。」

「…ありがと。」

冷たいペットボトルに入った水を受け取り、一気に喉に流しこむ。キンとした冷たさで少しだけ頭が冴えてきた。

「ねぇ、逆巻ライト。」

「なぁに?」

「…何を考えてるの?」

どういう意味?と彼は笑いながら私に問いかける。

「勝手なイメージだけど、アンタはその場が楽しければそれでいいようなヤツに見える。自分の快楽に貪欲な人に見える。そして、後腐れがないほうがいいと思ってると思う。」

「だいたい、あってるよ。それで?」

「そんなアンタが、私を引き止める理由がわからない。」

種族が違うとは言え、私とライトは考え方がすごく似ていると思うのだ。もし、私だったらめんどくさいから早く帰ってくれと思うのに、ココにいまだ私をいさせようとする真意がわからない。


「理由聞きたい?…だったらこっちに来て。」

再びベッドに転がっている、ライトの隣に座るとヤツは私の手に自分の手のひらを重ねぎゅっと握り締める。

「昨日のコトなんだけど、奈緒ちゃんとアヤトくんがシテるの見てすごく興奮したんだ。でもね…それと同時に少しイライラした。」

「…はぁ?」

「だからそのままの意味だよ。僕は思っている以上に、もしかしたらキミが気になってるのかも…って、なんでそんな冷たい目でこっち見てるの?そこは、『私も』とか言ってくれてもいいんだよ?…あぁでも、やっぱり奈緒ちゃんに虫けらを見るような目で見つめられるのはたまんないよ。そのまま、汚い言葉で僕を罵ってよ…!」

「意味わかんない。だまれ、変態。」

「言ってる僕も意味わかんないからねー。変態だけど、僕黙るつもりはないから。」

「あの逆巻兄弟に『気になってる』なんて言っていただけて光栄です。…これでいい?」

心がこもってないなーと彼は笑う。当たり前だ、こんな乱交まがいのコトしたあとに『好き』なんて思うほうがおかしい。

「お風呂、入っていい?」

「あれ?帰るんじゃなかったの?」

「じゃあ、帰る。」

嘘だよ、ゴメン帰るなんて言わないで。わざとらしいくらいシュンとした表情を作りこちらを見つめるライト。…本気でウソっぽい。けど、体がベタベタするのは事実だし一回家に帰るのも実際めんどくさくなってきた。

「ねぇねぇ、ボクも一緒に入ってもいい?」

「…風呂くらい一人にさせて。」

乱暴に浴室のドアを閉めると、「冷たいなー奈緒ちゃんは…体洗ってあげようとおもっただけなのにー」なんて抗議の声が聞こえたが、知らないふりをしてシャワーのコックをひねった。









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