QLOOKアクセス解析西のペテン師少女! | ナノ

05

徳川に連れられて彩夏はコートを離れた。もちろんジャージを拾うことを忘れずに。
徳川の後ろを歩きながら、背後でした音に彩夏は眉を寄せた。
天神がボールにあたっているのを音から推測し、彩夏はがっかりした。
ラケットやボールにあたったところで実力が伴うわけではない。
女子に負けて悔しいのは分かるが、道具にあたるのは頂けない。
道具を大切に扱わなければ上達などしないのに、それが分かっていないとは浅はかすぎる。
その辺の中学生と同じ思考を見せつけられ、彩夏はこんな程度だったのかと思わざるを得なかった。少し浮かない顔をした彼女に徳川が問う。

「がっかりしたか」
「多少は。洞察力の欠片もないし、おまけに道具にあたるなんて論外ですね」
「俺も同意見だ。彩夏はどうしてここに? コーチが女子を呼ぶのは初めてで理由が知りたい」

徳川の言葉に彩夏は悟る。ああこの人も、疑っているんだ、と。
当然と言えば当然なのだが、実力を認められた相手に問われるのは少し落胆した。
今まで対戦してきた相手は、全員といっていいほど彩夏に問うた。
どうして公式戦に出してもらえるの? コネを使ったの? 贔屓されてるの?
そのたびに愛想笑いを浮かべながら、何度否定をしたことだろう。違う、私がここにいるのは実力だと。
徳川なら問わないと思っていたのに。やっぱり、疑うんだ。
ずぶりと気持ちが沈んだが、そのままでいられない。
数百メートル向こうに缶を見つけ、彩夏はラケットを構えた。そしてポケットから出したボールを打った。
ボールは一直線に缶へと向かい、その直後カーンという高い音を響かせ缶が飛ぶ。
戻ってきたボールを片手でキャッチし、彩夏は笑った。どうですか先輩、とでも言うように。
ひしゃげた缶を見て徳川が再び問うた。

「…戻ってくるように計算して打ったのか」
「はい。だって取りにいくの面倒じゃないですか?」

あっさりいい退けた彩夏に徳川の闘争心に火がついた。
――面白い。なるほど、ここに呼ばれるわけだ。
徳川の表情が変わった事に気付いた彩夏は挑発的な笑みを浮かべ、こう言った。

「先輩、テニス、しましょうか」

その言葉の後、ざわりと風が木を揺らした。

 

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