QLOOKアクセス解析西のペテン師少女! | ナノ

02

彩夏は山の中に建てられた施設の前で、呆けたように立ち尽くしていた。その理由は施設の大きさにある。
選抜と言うからにはそれなりの人数が集まるわけで、それには敷地が必要だ。
それは当然のことで、彩夏だってそれはそうだと思う。だがこの広さはどうなのだろうか。
門の前にいるだけなのに、永遠と続く敷地が想像できてしまう。
鉄の扉と監視カメラが施設の広さをい物語っているようだ。果たしてこの敷地内にいくつ彩夏の通う学校が入るのだろう。
どうやって想像しても、見当すらつかない。ああ、もしかしたらすごいところに来てしまったのかもしれない。
一度そう思ってしまうと、足は思ったように動いてくれない。入ろうか入るまいか悩んで足踏みを何度も何度も繰り返す。
私、場違いじゃない? こんな大掛かりな施設に、女子高生って、絶対場違いだよ…。
招待状は、何かの間違いだったんじゃないかな。まだテニス暦が一年にも満たない私が呼ばれること自体おかしいんだ。
難しい顔をしてそんなことを考える彼女に、施設の方から声がかかった。

「君、ここに何か用?」
「あ、えと、選抜で呼ばれたんですけど…」
「君が三林彩夏ちゃんか。俺は入江奏多、案内するよ」
「ありがとうございます」

入江の言葉にニコリと笑みを返す彩夏。助かった。彼女はそんな風に感じていた。
メガネの奥で入江の目が少し見開かれる。飾らない子だな、と彼は率直な感想をもった。
大抵はぶった声と笑顔を向けるものだが、彩夏は違った。
本心からの笑みと言葉。それを女子から向けられたのは久しぶりで、入江は少し驚いてしまったのだ。
彼に向けられるのは、媚を売る繕われた笑みばかり。
下心が見えるそれは、向けられていて心地よいものではない。
まとわりつくようなしつこい笑みは、もううんざりだ。
そんな笑みなんて向けられたところで、入江の心は揺がないというのに、彼に群がる女子は飽きることなくそんな笑みばかりを浮かべるのだ。
面白い子。それが入江の抱いた彩夏の第一印象だった。
この子なら付き合っていても疲れないかもしれない。
そんなことを思いながら、入江は口を開く。

「僕の事は奏多って呼んで。君のこと、彩夏ちゃんって呼んでいいかな?」
「どうぞ、お好きに呼んで下さい奏多さん」
「ありがとう、彩夏ちゃん。じゃあ行こうか、徳川達が楽しみに待ってるんだ」

入江に案内されながら敷地内へ踏み込む。
その瞬間、彼女は猛獣の檻に入ったのと同然。この合宿はそこらの甘い合宿ではない。
故に実力のある、化物レベルの選手ばかりが集められているのだ。
そこに彩夏は僅かなテニス歴で飛び込んだ。この先、彼女がどうなるのかは神のみぞ知る。

 

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