QLOOKアクセス解析まだ恋ではないけれど | ナノ
「花宮、いきなりなんだよ。せっかく気持ちよく寝てたのによ……」
「とりあえず座れ、話はそれからだ」

寝ていたらしい瀬戸を呼び出し、自分の部屋に通す。まだ眠そうに目をこする瀬戸に、俺はコーヒーとケーキを出した。
今日のケーキはブラウニー。俺の得意なケーキの一つだ。いきなり呼びだした瀬戸には悪いことをしたと思ってるから、一応詫びの気持ちを込めてクリームを多めに付けておいた。
コーヒーを一口飲んだ後、クリームとブラウニーのバランスがおかしいだろ、とぼやいた瀬戸に、仕方なくブラウニーをもう一切れやった。これで文句はねえだろ。
俺はこれでもかというほどにミルクと砂糖を入れたコーヒーをすすりながら瀬戸の表情をうかがう。どうやら口ほどには怒っていないようだ。これなら話をしても怒られはしねえだろう。

「瀬戸、今日お前を呼びだしたのはだな、その、あのな……」
「さっさと言え、俺は帰って寝たい」
「せかすなって、そのな、す、好きなやつが、できたんだよ」

俺の言葉の直後に、カシャーンという高い音が部屋に響いた。瀬戸の手からフォークが滑り落ちて、皿とぶつかったらしい。おいおい、割れたらどうするんだよ。
文句の一つでも言ってやろうかと思って瀬戸の顔を見ると、瀬戸は目を見開き、口をポカンと開けていた。間抜けな顔だった、思わず笑いそうになったのをこらえた俺は偉いと思う。
とりあえず瀬戸がこっちへ帰ってくるまで待つか。また甘くしたコーヒーをすすって、ブラウニーを口へ運ぶ。うん、うまい。今日のブラウニーもうまい。
まだブラウニーはあまってるし、これをお礼として寒川にあげたら寒川は喜んでくれるだろうか。おいしいと言ってくれるだろうか。
そんなことをぐるぐると考えていると、やっと瀬戸がこちらへ帰ってきた。俺が恋をするのはそんなにおかしいことか。

「は、花宮……」
「何だよ」
「お前、誰に惚れたんだ。相手によっては俺は手伝えんぞ……」
「……寒川」
「寒川って、あの寒川か!?」
「寒川は一人しかいねえだろ。寒川氷雨だバァカ」

瀬戸はごん、と机に頭をぶつけた。いやいや、その反応はおかしいだろ。
確かに、俺と寒川は仲良くない……というより接点がなかった。今日のあの出来事で話すまで、会話なんてしたことなかったけどよ。
それでも俺は一方的にではあるが、寒川を知っていた。一年のころから剣道の大会では毎回必ず賞状をもらい、家が弓道の道場をしているとかで弓道の大会でも賞状をもらっていた。
それに加え、痴漢にあっていたり、ナンパされていた女を霧崎だけにかかわらず助けて、警察からも賞状をもらったことがある。
要するに、寒川は俺からみると、完璧な王子様だったわけだ。バスケ部もよく賞状をもらってるから、壇上に上がった時隣になるなんてことはざらにあった。
俺と数センチしか変わらない身長と、凛とした雰囲気と。しっかりと伸びた背筋と、しっかりと前を見据えたきれいな目。
どれも印象的で、記憶から離れない。女子が騒ぐのもうなずける。バレンタインにはあの女子に混ざってチョコを渡したいとさえ思ったんだから。まあ、行動に移したことはねえけど。
そんな回想に思いを巡らせていると、瀬戸が顔をあげて言った。

「花宮、諦めろ」

…オイ、ふざけんな。
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