QLOOKアクセス解析days of betrayal | ナノ

scene:海常
武器を手にした海常は、周りを警戒しながら本館一階をゆっくり東へ進んでいた。
笠松と黄瀬は水鉄砲を、早川はサバイバルナイフを、小堀は細身の刀、森山は投げナイフを。
各自の手にしっかりと武器を握り、いつ襲われてもいいように万全の準備のうえ、彼らは校内を歩いていた。

「あーあ、合宿がこんなことになってさえいなければ、女の子ナンパできたのになあ」
「森山、ふざけんなよ。ナンパしてる暇があるなら練習に当てろ」
「そんな練習ばっかだと息が詰まるだろ。なあ、黄瀬」

森山にいきなり話を振られ、黄瀬は変な声をあげ返事をした。
笠松の目が黄瀬を睨んでいる。その鋭さは鋭利な刃物を思わせる程だ。
二人の先輩に正反対な同意を求められ、黄瀬は困ったようにあははと笑うだけ。
その反応に笠松の視線が更に鋭くなる。黄瀬としては先輩を敵に回すようなことはしたくない。特に笠松は。
それゆえどう言葉を返せばいいか分からないのだ。返事しようにもできないため、どうしても曖昧な笑みが浮かぶ。
それが笠松には彼を馬鹿にしているように思えるらしく、どんどん視線が鋭くなっていくのだ。
彼の視線で黄瀬は返事をしづらくなって、また黄瀬の心境は最初に戻る。
どうあがいても悪循環でしかない。
そんな悪循環を繰り返す三人の頬を、突然何かがかすめた。
咄嗟に三人がよけたためかすめただけですんだが、反射神経が彼らほどなかったら、間違いなく死亡判定がついただろう。
危機一髪な攻撃を仕掛けられたのだ、三人が怒らないはずがない。
先程までのやり取りを忘れ、彼らは攻撃を仕掛けた人物――早川を睨んだ。

「先輩、何するんスか!」
「早川! なんのつもりだ! 俺達がよけてなかったら、お前のせいで死亡判定がつくところだっただろ!?」
「三人がわ(る)いだ(ろ)! 今口喧嘩して(る)場合じゃないのに、口喧嘩を始(め)るか(ら)!」
「あ!? ふざけんな! 確かに口喧嘩は悪かったが、だからと言ってさっきのは許される行動じゃねえだろ!」
「あー、もう俺抜けた! 女の子もいないし、いつ殺されるか分からないグループにいられるか! 一人の方がまだマシだ!」

森山が吐き捨てるように宣言して、海常のグループから抜けた。
笠松が静止の言葉をかけるが、彼はひらりと手を振っただけだった。
二階にのぼる階段へ森山の姿が消え、彼らに沈黙が落ちる。
どうして、こうなった? 笠松は自問自答を繰り返した。
だが答えは出ず、状況は悪いまま。不安そうな表情の黄瀬がどうしても気に触って、笠松は怒鳴るように言った。

「元々は、お前のせいだろ!」
「え、ちょ、先輩!?」
「お前が海常に入ってから、ギクシャクしてんだよ!」

止まれ、止まってくれ。
笠松は自分の口をどうにか塞ごうとするが、口は彼の意志とは裏腹にどんどん暴言を紡いでいく。
そんなことが言いたいわけではない。これ以上、チームをバラバラにしてはいけないのに。自分がまとめなくてはならないのに。
体がいうことをきかない。まるで他人の体のようだ。
ついに彼の口は、彼の意思とは真逆な言葉を紡ぎ出す。

「お前らなんかもう知らねえ! 生きるも死ぬも勝手にしろ!」

残された部員がどんな顔をしているのか確認せず、笠松はその場を走り去った。
ああ、言ってしまった。そんな後悔が胸を蝕む中、なぜだか清々したと感じる自分もいて。
もう勝手にしてくれ。単独行動をとりながら、笠松はやけになっていた。
一瞬で築き上げてきたものが壊れる音がした気がする。
だが笠松はそれには気づかないふりをした。認めてしまえば、自分がした事の重大さを受け止めることになってしまうから。

分裂が起こったのは、ゲーム開始からたった一時間後の出来事。
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