QLOOKアクセス解析days of betrayal | ナノ

scene:誠凛
合宿と称して呼び出された誠凛は、校舎内に流れる放送で、自分達が騙されていたことに気がついた。
廃校という時点で怪しいと思わなければならなかったのに、それを忘れた自分達に、彼らはいらだちを隠せずにいる。

「んだよ…、ざけんな…!」
「廃校はおかしかったですよね、なんで気付けなかったんでしょう…」
「とりあえずさ、身を守ることが重要だよね! いくら死なないっていっても、殺されるのは勘弁だし」
「そうだな、とにかく下駄箱にいこう」

火神、黒子、小金井、伊月の言葉に、他の部員が頷く。
幸い下駄箱が近くにあったため、あまり移動せずに到着できたが、日向が少し離れた所で立っていた。
不審に思った木吉が彼の近くに寄るが、依然日向は動こうとしない。
しびれを切らした伊月が声を掛けると、ようやくゆっくりではあるが顔を上げた。

「日向、なんのつもりだ? 早いとこ武器をとっておいた方がいいだろ。まさか怖いのか?」
「怖い? んなわけあるか、ダァホ」
「ならどうしたんだよ、日向」
「お前ら…、分かってないのか…? 今の状況は…」

この中の誰かが敵かもしれないんだぞ。
その言葉を聞いて、誠凛のバスケ部は黙った。
そうだ、それも有り得る。誠凛の生徒じゃないという先入観は捨てなくてはならない。
誰が討つべき相手でもおかしくはない。仲間を信じたくないわけではない。だが、全面的に信じられる状況ではないのだ。
いくらゲームだと分かっていても、死ぬのと同意義な状態にはなりたくない。
どうするべきか悩む彼らに、背後からけらっとした声がかかった。

「あれ、誠凛さんじゃないっすか、おひさしぶりでっす」
「高尾…、ということは秀徳か」
「そうっすよー! 俺達も武器を取りに来たんすよ」
「高尾、ぺらぺら喋んな。轢くぞ」

高尾の頭を掴んだ宮地が、いつもにもました黒い笑みを浮かべている。
あはー、と冷や汗をたらしながら、困ったような笑顔を貼り付ける高尾。
二人のやり取りを見ながら、リコは考えた。何が目的なのだろう、と。
自分の仲間に、討つべき相手がいてもおかしくない状況で、なぜ誠凛に接触してきたのだろう。
メリットはないはずだ。せいぜい、顔色と声色を伺えることぐらいしかない。
それなのに、スルーできる場面でなぜスルーしなかったのだろう。
誠凛を潰すためか? だが、それが目的であるという確証はない。

「何も用がないなら、俺達は行くが」
「ちょっと待ってください。お話がありまして」
「緑間…、なんだよ話って」
「秀徳と情報交換しませんか。もしくは手を組みませんか」

緑間の言葉に、リコの顔が難しそうに歪む。
この時点で協定を結ぶ? 一体何を考えているのか。
情報が少ない今、情報交換の申し出はありがたい。
だがその情報が誠凛を陥れるための誤情報だったとしたら。
それを信じてしまえば、秀徳の手のひらで踊らされることになる。
あまりにもこの提案はリスクが大きすぎる。
乗ってみるべきか、断るべきか。考えた末、リコが口にしたのはこんな言葉だった。

「情報交換をしたときの、私達のメリットは何?」
「分かっていると思ったのですが。情報が増え、優位に立てます」
「あなたたちの情報が間違っていたらどうするつもり? デメリットでしかないじゃない」
「それは秀徳側も同じです。誠凛が誤情報を伝えれば、後はおわかりでしょう?」

緑間の言葉に、リコは押し黙った。それもそうだ、秀徳も誠凛と同じだけのリスクを負うことになる。
正直な話、デメリットであることを前提とした賭けだ。
誠凛バスケ部の部員が、リコの判断を待って彼女へ視線を向ける。
しばらく悩んで、リコは顔を上げた。

「いいわ、情報交換しましょう」
「誠凛なら分かってもらえると思っていました 」
「ただし、信憑性の高い情報を一日一つの条件付きでね」

にやりと笑ったリコに、ぽかんとした表情をした緑間だったが、すぐ切り替えて分かりました、とだけ答えた。
そしてその場を去り、下駄箱に残されたのは誠凛だけとなった。

これは、ゲーム開始からわずか五分後の出来事。
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