QLOOKアクセス解析days of betrayal | ナノ
scene:霧崎第一
六時数分前の体育館。がらんとしているそこに、霧先第一の四人だけがいた。
彼らの目的は六時に流れるデータ。一日一度だけしか流れないそれは、ゲームを進めるにあたっては重要なものだ。
妙にがらんとしていることに疑問は隠せないが、よく考えて見れば好都合だ。他校が知りえない情報を知っているなら、それを利用できる。
ルールを熟読しなかった奴らはバカか。花宮は特徴的な笑みで彼らを嘲笑した。

「さて、誰が脱落したかな」

楽しそうに言った花宮から原達が呆れたように目をそらす。大方悪趣味な楽しみ方だと思っているのだろう。
花宮はそれに気づいているし、自分でもそう思っている。だが見ていて楽しいのだから仕方がない。ゲームの楽しみ方は人それぞれだ。強要するわけにはいかない。
火神が忙しく朝食を運ぶのを横目に、彼らはモニターを凝視した。
モニターに流れるのは脱落者と鬼。一日目が終わったばかりなのであまり数は多くない。
まず脱落者。脱落者は日向一人だけ。鬼でもなかった彼が脱落者したのはどうも不憫でならない。
日向の名前がモニターの上に消えた後、続いて流れるのが鬼の名前。
流れた名前は紫原、青峰、瀬戸、早川の四人。まあそうだ、初期の鬼が四人で鬼の人数を追加するようなミッションは起きていない。この時点で鬼が四人より多ければ、ゲームのシステムエラーになる。

「まだ瀬戸鬼だったのか」
「アイツ死ぬつもりじゃないよね? そんなに馬鹿じゃないと思うんだけど、どうなんだろ」
「死ぬつもりじゃないと思う。瀬戸は自分から鬼になった。何かやりたいことがあるんだろう。それがなんなのかは知らないが」

古橋の言葉に、原はなんとも言えない調子で俺達に関係しないもんだといいけど、とだけ返した。
チームメイトに対しては冷たい言葉ではあるが、本音はそうだ。
いくらチームメイトだとは言っても、ゲームでの生存を妨げられては困る。頭脳派な花宮がいるのだから、早々に全員脱落したとなれば恥以外のなんでもない。
それに黄瀬と手を組んでいるのだ、彼に示した言葉を実現できなければ、誰からも目を向けられなくなるだろう。このゲームだけで、彼らの後々の位置が決まるのた。
これからどうするか。黄瀬が誠凛の情報を回してこない限り派手に動くことは出来ないが、少しの手は打たねばならない。
もちろん彼の言う手とは、都城疑いを向けさせること。現時点で一番怪しいのは都城なのだから、彼女には犠牲になってもらわなくてはならない。

「ふあ…、火神くん、私朝はパンケーキ派なんだけどなー」
「知らねえよんなこと!」
「まあ出されたものだから食べるけどさー、明日はパンケーキがいいなあー」
「無茶振りすんなよ!?」

眠そうにあくびをしながら、都城が体育館に登場した。
まだ他校は来ていない。仕掛けるにはまだ早いか。顔に人の良さそうな笑みを貼り付け、花宮は都城へ目線をやった。
どうすれば一番都城が怪しくなるだろう。やっぱり情報かく乱か?
そんなことを考えながら、花宮はスクランブルエッグを口へ運んだ。
昨日の騒動を利用しようと思ったが、それは出来なくなってしまった。脱落者に日向がいるということは、ゲームマスターは彼でなかったということ。
二人まとめてゲームマスターに仕立て上げようと思っていたが、それは不可能になった。
いくら花宮でも、矛盾のない嘘はつけない。それに嘘となれば、それに信憑性をつけなくてはならなくなる。
大勢が目にしていない出来事で信憑性を持たせるのは実に難しい。一種の博打のような嘘を流しても、どうせすぐに嘘だとバレる。
そうなれば怪しまれるのは花宮。実行にうつすにはリスクが高すぎるのだ。
そこまで考えてから花宮は思いつく。それを逆にとればいいのではないかと。
そうだ、都城に聞いたことにして嘘を広めればいい。少し信憑性があって、なおかつ考えれば嘘だと分かる嘘を流せばいい。
しかし肝心の嘘が思いつかない。どうする、考えろ。そう自分を追い込んでみるが、逆に焦ってうまく思考に至らない。
ああ、イライラする。彼のイラつきを高めるかのように、体育館に人が流れ込み騒がしくなっていく。
脱落者と鬼の情報を逃した、などという間抜けなそれに、花宮の神経は逆撫でられるばかり。
うるせえ、ちょっと黙ってろ。貼り付けられた笑みからでさえ、不機嫌なのが見て取れる。

「ん? アイツなにやってんだろ。花宮、見てみろよ」
「あ?」
「放送係に近付くなんて、物好きもいるもんだねー」

原の指差す先には、都城に話しかける桜井がいた。
距離があるため何を言っているかは分からない。しかし、桜井の手に生クリームとチョコソース付きのパンケーキがあるあたり、リクエスト朝食かなにかを持ってきたところなのだろう。
さっき火神にパンケーキ派だと言っていたのを、どこかでこっそり聞いていたのかもしれない。
ああ、これは使えるんじゃないか? 花宮はそう思った。
桜井をゲームマスターに仕立てあげればいいんじゃなかろうか。都城が言った、ということには出来ないが、そんなニュアンスの事を言った、ということには出来るだろう。
桜井くん、ごめんね? 君に恨みはねえけと、巻き込ませてもらうわ。
花宮の顔がいやらしい笑みに歪む。これからどう動いてくれるかな、楽しみだねえ。
花宮の声色からは、そんな声が読めた。

「そういえば、知ってる? 放送係の人に誰がゲームマスターなのか聞いたんだ。それでさ、あの人が言うに、自分と仲が良くて、なおかつゲームマスターに向かない人間だって。あの人を見てたら、仲いいのって桐皇のあの一年生だけだよね」

作り上げた嘘に、周りの学校が反応したのが分かった。
バッカじゃねえの、少しは疑えよ。花宮の口からは今にもそんな言葉が飛び出そうだ。
犠牲になってもらうよ、放送係サン? 花宮のろくでもない策略に巻き込まれていることを、都城も桜井もまだ知ることはなかった。
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