QLOOKアクセス解析days of betrayal | ナノ
scene:誠凛
既に二人が初期の鬼ではなくなった。誰が今の鬼かは不明だが、初期の鬼だった人ではないと思われる。
あと残るは日向と笠松の二人のみ。二人とも誠凛を狙うとは思えない…いや、思いたくない。
日向が誰かにウイルスをうつせるよう協力したいが、日向がどこにいるか分からない今、誠凛に出来ることはただ逃げるだけだ。

「日向、大丈夫だといいが…」
「大丈夫だろ、日向なんだし! 日向がこんな序盤でくたばるわけねえって!」
「あの、悪いンすけど、俺そろそろ食事の準備行かないとなんないんで…」
「ああ、そうだったな! 火神、うまい飯期待してるぞ!」
「ウィッス」

火神の申し訳なさそうな申し出に、木吉が思い出したように彼を送り出す。
本来ならリコや桃井が作るべき所だが、彼女たちに任せては危険すぎる。
よって彼女達がいる学校から代理を立てたというわけだ。
火神と桜井なら食事に期待出来る。

「火神も日向もいないとなんかさみしいよなー」
「まあ仕方ないだろ、これは。日向が早くどうにかできればいいんだが…」
「あの、先輩方」
「うおっ!? 黒子!? いつからそこにいたんだよ!」
「火神くんが抜けたあたりからです」

突然の声に、話していた小金井と伊月の肩が跳ねた。
いつもならもう少し早く彼に気付けるのだが、ゲームに気を取られ黒子の気配を見過ごしていたようだ。
黒子はその反応に慣れきっているため、いつもの無表情で彼らを見つめている。

「驚かせるなよ、黒子…。寿命が縮んだだろ…」
「すいません、わざとじゃないんです」
「分かってる。それで何か話か?」
「はい。僕、先輩方を途中で見失って、さっき校内をうろうろしてたんです」
「ああ、それで?」
「途中で黄瀬くんにあったんですが…」
「黄瀬に? もしかして、なにかされたのか!?」
「いえ、なにもされていません。ですが少し信じ難いものを見てしまいまして」

黒子の言葉に伊月を初めとして、他の部員たちもそれがなんなのかを、身を乗り出して聞こうとしている。
そんな反応に黒子は少し答えづらくなって、視線を泳がせた。
なんなのよ、黒子くん。リコが問うが、彼はやっぱり視線を泳がせたまま、口を開こうとしない。
嘘や冗談が苦手だという彼のことだ、嘘をつこうとしているのではないのだろう。
言うべきか言わざるべきか、迷う黒子にとうとうリコが痺れをきらせた。

「黒子くん、自分から言い出したんだから早く言いなさいよ! 気になるでしょ!」
「え、あ、はい、すいません…。僕が見たのは、海常がバラバラに分裂しているところです」
「海常が分裂? まさか! あの学校が分裂!? そんな馬鹿な話、あるわけないでしょ!」
「僕も目をうたがいました。あのチームが分裂なんてするわけないと思っていましたから」

黒子の瞳は、しっかりリコを捉えている。嘘をついているような目ではなかった。
先程も言ったように、黒子は嘘や冗談の類が苦手だ。
ゲームの途中なら、嘘の一つや二つつくかもしれないと思ったが、黒子はリコの予想に反し、真実のみを伝えている。
いつも嘘や冗談は苦手ですと公言している彼のことだ、それを利用することを考えなかったわけではないだろう。
常に言っていることは、発言者を外から守る鎧や盾になる。黒子が普段何気なく話していたことが、今は彼を守る鎧になっているのに。
おそらく、黒子はそれに気付いている。気付いていないはずがない。
だがそれを利用しないということは、信用していいのだろう。リコ達が海常を見たわけではないのだから、頼れる情報源は黒子だけだ。
もし誤情報だったら。嘘を言った時点で、黒子は一気に怪しくなる。
ゲームマスターはおそらく、このゲームの流れを全て把握しているはずだ。
監視まではいかないだろうが、なにかしら情報は手にしているだろう。そうでなければ自分で自分がゲームマスターであるとバラしてしまうことになる。
そこから、黒子がもし嘘を言った場合、彼がゲームマスターである可能性が高くなる。
リコがそんなことを考えているなどとは露知らず、黒子は続ける。

「あの、こういう目であまり見たくはなかったんですが…」

ゲームマスターは、黄瀬くんか笠松さんじゃないでしょうか。
その言葉に、リコの眉がよる。どうしてそんなことをいうのか。
まるで、リコの考えていたことが見えているかのような、推理のタイミング。
まさか、本当にゲームマスターじゃないでしょうね…。
リコの内心でそんな問いかけが浮かんだが、口に出すのはなんとかおさえた。まだ言うべきではない。確証がまだもてない。彼に問うのは、そうとしか考えられなくなったときで、まだ間に合う。
ひとまず今は黒子のことはおいておいて、彼の考えを考えなければ。
ありえないことではないが、二人のうちのどちらかかゲームマスターであるという証拠はない。
それも今は保留しておくしかない。情報が少ない今、軽率な判断でゲームマスターだと断定するわけにはいかないのだ。
一つの場所にとどまるわけにはいかないと、放送室の前を彼らが通り過ぎようとしたときたった。

《お知らせー、お知らせー。日向くんと笠松くんが鬼ではなくなりましたー、繰り返します、日向くんと笠松くんが鬼ではなくなりましたー。
よって、ミッションは終了でーす。結果はミッション失敗、よって、北館四階を封鎖しまーす
それからお呼出し、お呼出しー。火神くんと桜井くんは、至急放送室前に来るようにー》

放送室前。その単語に誠凛の足が止まる。今ここを動かなかったなら、放送を流している人物が分かるかもしれない。
その人物は、このゲームをよく知っている。なにかゲームマスターの手がかりが掴めるかもしれない。
もしかすると、その人物自体がゲームマスターである可能性がある。
それならここで待ってみるのも手かもしれない。放送室に体を向けて、放送を流している人物が出てくるのを待っていると、彼らに答えるかのように少女――都城が出てきた。

「あなた、放送流してる人?」
「そうだけどー? 誠凛さんはみんなおそろいだねえ」

ケラリと笑った彼女に拍子抜けする誠凛。頭脳戦であるこのゲームの放送をしているのだから、もっと緊迫感に満ちた人物なのかと思えば、全くそうではない。
口調からして、あまり真面目そうな雰囲気はなかったが、こうも鈍そうな人物だとは思わなかったのだ。

「あなたに聞きたいことがあるんだけどいいかしら」
「んー、プライベートのことと、ゲームの本質の話じゃないなら、多少は答えるよー?」

前言撤回、彼女は鋭かった。誠凛の聞きたいことは丸見えらしい。
さて、どう彼女に質問をしようか。火神と桜井が来るまで、時間は少ししかない。
それまでに有効な情報を聞きださなくては。
リコは一人だけ小さく唾を飲み込み、都城を見つめながら笑ったのだった。
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