QLOOKアクセス解析days of betrayal | ナノ

scene:陽泉
福井を欠いた四人が、北館四階で外の様子をうかがっていた。
二メートル超えの男が三人もいるのだ、下の階にいては目立って仕方がないため最上階のそこにいるのだ。

「やっぱり、本館の方がよかったアルよ。様子見には北館は向かないアル」
「そう言いつつも勝手に進んだのはお前じゃ!」
「ちょっと黙るアル、モミアゴリラ」
「なっ!」

いつものやりとりを繰り返す二人に苦笑しつつ、氷室は窓の外に目を向けた。
今のところ、目立った動きは見られない。それほど警戒する必要はないと思うが、やはり不安なものは不安だ。
隣でスナック菓子を咀嚼する紫原に、氷室はため息しかもれなかった。女子が見れば黄色い声があがったであろうそのため息に、紫原は首を傾げるだけ。
彼にはなぜ氷室がため息をついたのか、分かっていないのだろう。紫原は若干人の心理に鈍いところがある。よくも悪くも無垢だ。
そして、彼の思考のほとんどはお菓子で埋まっている。今も何を思ったのか、抱えていたお菓子を氷室から遠ざけた。
氷室のため息が空腹から来たものだと思ったのだろう。単純すぎる思考に、氷室は再びため息をついた。
氷室は心配だった。こんな子供のような紫原が、このゲームで生き残れるかどうかが。
お菓子をチラつかせれば、簡単に騙されてしまう紫原が、この頭脳戦で利用されないわけがない。
最悪他校の盾にされかねない。彼ほどの巨体は、敵の攻撃を防ぐにはもってこいだ。
普段からお菓子はほどほどにしろと、もう少しキツく指導しておくんだった。
今になってから後悔したが、とき既に遅し。後の祭りでしかない。

「アツシ、俺から離れないようにね」
「んー? なんでー?」
「…今何が起こってるか分かってるかい?」
「さあ? オレよく分かんねーし。さっきの放送なにー?合宿じゃねーの?」
「…はあ」

なんとも紫原らしい返答。まさかとは思ったが、今何が行われているかすら、よくわかっていないらしい。
ということは、必然的にルールすら怪しいということになる。
それを悟って、氷室の口からは本日最大のため息が漏れた。
こんな調子では、氷室が心配したようなことが起こる可能性もある。…いや、おそらく起こるだろう。
他人にあまり興味のない紫原のことだ、そう簡単に騙されるわけはないと思うが、元チームメイトに関しては怪しいところである。
キセキの世代。特に赤司と黒子は、紫原を利用しそうな気がする。
黒子はミスディレクションという、このゲームで有利にたてる能力があるが、赤司にはない。
赤司の目は厄介だが、黒子ほどの防御的な能力ではないのだ。
そこで彼がどうするかを考えると、物理的な盾を必要とするのではないかという結論に至った。
キセキの世代の中で、特に赤司と仲の良かった紫原のことだ。赤司になら簡単についていきそうな気がする。
さて、それをどう防ぐか。別に学校単位で勝敗を競うわけではない。
だが氷室はこのゲームに負けたくはなかった。頭脳戦で負けるのは、なんとなく尺に触るのだ。
氷室は紫原に死亡判定を出したくなかった。きっと死亡判定がついてしまったら、紫原は拗ねてしまうだろうから。
そうなれば面倒なのは氷室だ。拗ねた彼の機嫌を回復させるのは、いつも氷室の仕事だから。
それに、いざとなれば氷室の盾にできる。それが一番の理由であった。

「とりあえずアツシ、今起こってることの説明をするよ。一回で理解して」
「氷室、それよりいい方法あるぞ」
「あれー? 福ちんじゃーん、どこいってたのー?」
「地獄の宣告を受けに、ちょっとそこまで…なっ!」

福井の強調された言葉の後、彼の手が何かを投げるように動いた。
これはマズい。氷室達の体が動いたのと、中身が外に飛び散るのはほぼ同時だった。
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