QLOOKアクセス解析Dear.匿名様 | ナノ
あの本にメモを挟んだ翌日。私は登校するや否や、図書室へ向かった。
図書委員長の私には、図書室の鍵が預けられている。
一年生なのに図書委員長なんておかしな話だけど、推薦されてしまったんだから仕方がない。
多分私が一番文句を言わなさそうに見えたんだろう。事実私は文句なんか言わなかったけど。
鍵が預けられるなら、好きなときに図書室が開けられるもの。そんな特権を誰が拒否するもんか。
まだ誰もいない廊下に、図書室の鍵が開く音が響く。司書の先生はまだ来ない。少しの間、図書室は私だけの部屋になる。
一歩踏み出すと鼻を掠める少し古びた本のにおい。ああ、落ち着く。図書室はこうでないと。
そんなことを思いながら、私の足が進むのは図書室の奥。あの本のある本棚へ、意識せずとも足は進んでいく。
もう返事は来ているだろうか。それともまだメモを見ていないだろうか。
口元に小さく笑みが浮かぶのを感じながら、目的の本棚の前で足を止める。
本は貸し出しになっていない。当たり前といえば当たり前なのだけれど、あのメッセージをくれた人が借りているかもしれなかったから。
本棚にいつもどおり収まっていることに少し安心した。安心したっていうのも変な話なのだけれど。
胸が高まるのをおさえつつ、本をそっと引き抜く。一つ一つの何気ない動作にも、私の期待はどんどん膨らんでいく。
ああ、もう変なの。読書をしているとき以外こんな気分になったことはないのに。
ゆっくりと表紙をめくると、そこには真っ白な小さい紙が挟まっていた。昨日私がはさんだものじゃない。返信が返って、きた。
そっと紙をつまみ上げると、そこには綺麗な文字でこう書いてあった。


『僕は思ったことを書いただけだよ。君の詩はとても印象に残る。綺麗な文章だと、僕は思うよ』


なんてこの人は温かい言葉を紡ぐのだろう。文字は少し冷たい印象を与えるけれど、書いていることはすごく温かい。
まるで春の日差しのようだ。紙に刻まれた文字を指でゆっくり撫でていると、少しはなれたところから声がした。

「宮代? こんな朝早くに何をしているんだい?」

その声に振り向くと、そこにいたのは赤髪のクラスメート。そして、私の苦手な人。
そっちこそ、どうして朝の図書室にいるの。バスケ部は、朝練のはずなのに。
図書室は本来朝は開放されない。昼休みと放課後だけだから、こんな時間にここを訪れる人なんていないはずなのに。
軽い驚きと、苦手意識のせいで言葉が出ない私に彼がこちらへ足を動かしているのが見えた。
こないで、こっちへこないで。私の心の声なんて、彼には届かない。
折角返事が来て気分が良かったのに。どうしてすぐいやなことに遭遇するのかな。
ねえ、赤司くん。私の些細な幸せに浸る時間を壊さないでよ。
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