QLOOKアクセス解析Re-birth | ナノ

学校が終わって、どこへよることもなく家へ帰る。
まあ帰り道によるところなんてないし、どこかによって使えるお小遣いもない。
貧乏学生って辛いなあ。そんなことを考えながら、裏門へ向かう。
面倒なことに駐輪場が裏門のほうにあるから、遠回りになるけれど裏門へ行かないといけない。
バス通学にすればよかったなあ。いまさら遅い後悔をして、ゆっくりと歩き始める。
温かいから、今日は久しぶりに薄着で外に出られるかなあ。
家に帰ったら、薄手のシャツにパーカーとショートパンツを合わせてストバスへ行こう。
チームでバスケをするのは怖くなったけど、何故だか個人練習は欠かしたことがなかった。
まだどこかで試合をしたいって思ってるのかな。チームに必要となんかされないと思うけど。
なんて考え事をしながら歩いていたら、足元にバスケットボールが転がってきた。
ああ、そうか。ここ体育館前だった。バスケ部の備品、かな…?
でも誰も取りに来ないんだけど、これどうすればいいんだろう。…誰もいない、なら。
体育館の中を覗き込んで、誰かいるか見渡してみる。

「…あれ、誰もいない…?」

なんでだろう、ボールが転がってきたんだから誰かいると思ったのに。
誰もいないなら、一回ぐらいシュートしてもいいかな…? これぐらい、許してもらえる…よね…?
足元のボールを拾って、体育館のほうへつま先を向ける。
ローファーを脱いで、荷物を放り投げて体育館へ。一回だけ、一回だけ。
…あのナンバーワンシューターを超えられるなんて思ってないけど。でも、あれは決めてみたいから。
ずっと練習してたんだから、そろそろ決まってほしいな、なんて。
半分願望で、ゴール下からボールを投げてみる。大丈夫、フォームは崩れてない、と思う。
手から離れたボールは放物線を描いてゴールへ一直線へ飛んでいく。お願い、入って。
そんな願いが届いたのか、ボールはリングの中へ落ちた。ネットが小さく音を立てる。

「…入っ、た…」
「うそ…。なんで、こんなことが…」

私の呟きの後に聞こえた声。バスケ部の人が、いた…?
声のしたほうに顔を向けると、そこにはショートカットの女の人が立っていた。
多分、先輩だと思う。ばさばさとその人が持っていたバインダーが落ちた。
それを気にすることなく、その人は私に近づいてきた。
怒られる。そりゃそうだ。勝手に備品を使ったんだから。

「ちょっと貴女…」
「ごめんなさい! もう勝手に備品使いませんから!」

放り投げた荷物を持ち上げて、ローファーに足をねじ込んで走る。
後ろから私を呼ぶ声が聞こえたけれど、足を止めずに走った。ごめんなさい、本当に。
自転車置き場まで走って、ようやく足をゆっくり止める。大丈夫、追いかけてきてはいないみたい。
息を整えてから、自嘲する。ああ、私まだバスケを手放せてないんだ。

「…馬鹿みたい。自分から諦めたくせに、まだ諦めなんかついてないんだ」

この執着心はなんだろう。我ながら気持ち悪いなあ。
もう私にバスケをする資格なんてないのにね。まだバスケに縋って、もがき続けてる。
この足が動かなくなっていたなら。この肩が上がらなくなっていたなら。
こんなにバスケに縋って、もがいて、焦がれることなんてなかったのかな。
そんな現実仮想なんて、なんの役にもたちやしないのに。
はあ、とため息をついて自転車のロックを外す。ストバスにいくのはやめよう。
自転車を押して歩く私に、クラスメートがこんな一言を言っていたなんて、私は知らなかった。


「…なんだ、アイツすげえ…。…バスケに、引っ張り込むしかねえだろ」


「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -