QLOOKアクセス解析Re-birth | ナノ


まだ着慣れないセーラー服のすそをつまんでみて、少しだけ笑みが漏れる。
部活勧誘をやんわりと断りながら、校内の桜並木を歩く。
もう入る部活は決めているから、残念だけど私への勧誘に意味はない。
高校の三年間は、中学のような辛い思いをしながら部活はしたくないから。
だから私はさっさと部活を決めて、そこで目立ちもせず引退まで過ごしたい。
なんて思いながら校舎へ歩いていると、後ろから肩を叩かれた。
知り合いなんかいないはずだけど。そう思いながら振り向くと、そこには元チームメイトがいた。

「歩さん。歩さんも誠凜だったんですか」
「……黒子」
「携帯で連絡しようにもできなかったので、少し困りました。お久しぶりですね」
「ごめんね、会社変えたからメアド変わったんだ。そうだね、久しぶり」

なんてことだ、チームメイトを避けて誠凜を受験したというのに、初日から会うって本当についてない。
でも黒子で助かった、黒子でなかったら私は不登校になるところだった。
その辺は感謝するべきところなのかもしれない。
なんて考えていたら、黒子が私の腕を引っ張った。

「え、ちょ、私まだクラス表見てないんだけど」
「大丈夫です、僕と同じクラスです。歩さんと一緒でよかったです」
「ああ、そう……」

こういうとき、どうしたらいいの。
嬉しくないわけではない。でも嬉しいわけでもない。言い表せない複雑な心境。
そんな心境だと知らない黒子は、私の手を引いて昇降口へと歩いていく。
わずかな距離の中でも部活勧誘のためのチラシが押し付けられるけど、それをなんとかかわしながら黒子に置いていかれないように足をすすめる。
ミスディレクションの使えない私がこの中を歩くとどうなるのか、黒子はわかっていないんじゃないだろうか。
黒子はこんななかを歩いても、チラシを押し付けられることなんかないんだから。
ああ、羨ましい。私もミスディレクションか使えたら。
そうしたら、私の周りはあんなにも激変しなかったかもしれないのに。

「歩さんの靴箱はそこですよ」
「え、あ、うん、ありがとう」
「いえ。……歩さんは、」

黒子の声が途切れた。
新入生の明るい声が、先輩の勧誘の大きな声が、先生の声が。
ずっとずっと遠くに聞こえて、私は一種の目眩をおぼえた。
この先に続く言葉を、私はもう分かっている。だから。
だから私の目の前がゆれたような気がした。お願いだから、私にその話題を振らないで。

「歩さんは、高校ではバスケなさらないんですか」

ああ、こんな些細な願いさえも、叶わない。
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