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日吉

大好きな人にリボルバーを向ける。
そんな事、あり得ないって日吉は笑ったよね。
でも…、これは現実。
‘サンタ’さんからもらった‘実弾入り’のリボルバー。
これで日吉を撃つ事になるなんて。
信じたくなかったのに、信じざるを得ない。

「日吉、ゴメン…」
「こうなるのは薄々気付いてました。先輩が‘そっち’側の人だって事ぐらい、なんとなく気付きますよ」

そう言って微笑んだ日吉に泣きそうになった。
どうしてそんな風に笑うの?
悪いのは全部私なのに、どうしてそうやって笑って私を許すの?
撃鉄を起こして指を添える。
人を撃ったのはこれが初めてじゃないのに、撃つ前に涙が出るなんてこれまでで初めてだ。
いつでもいいですよ、先輩のためなら、と笑ったまま逃げようとしない日吉。
気付いていたなら、私と関係を絶てば良かったのに、どうして私と関係を絶たなかったの?
震える指を押さえて引き金に力を加えた。

「先輩、俺は先輩の事を――…」

乾いた音のあとにゆっくりと倒れる日吉。
空間に残された赤がいつもの事ながら妙に生々しい。
さよなら、愛しい人…。
雪の上の日吉は穏やかな顔をして事切れていた。
死んでもなお、あの優しい微笑みのまま。
憎んでくれたらこんなに辛くないのに。
止めどなく流れる涙の奥で、今までの思い出がフラッシュバックする。
桜の木の下で出会って恋に落ちた。
夏には二人で色んな所へ行って、思い出を作ったあの日々が懐かしい。
秋の夜にはたどたどしかったけど、一つになった。
そして今日冬の日…終わりを告げた。
もしやり直せるなら、また二人で花火大会に行きたいね。
浴衣が似合う日吉をいつまでも眺めていた、あの日をもう一度…。
花火の光りに照らされた日吉が言った言葉。

『いつまでも一緒にいましょうね』

いつまでもなんてあるはずがなかったのに、その時は本当にいつまでもがあると錯覚してしまった。
今では、もう果たされる事のない言葉。
けれど、私はこれで終わりにしたくなかった。
日吉がいないなら、私が向こうにいけばいい。
そう、簡単な事である。
‘悪’の私と‘正義’の日吉。
真逆の私達が交わったのがこの結末の元だ。
結ばれてはならないと、情を移してはならないとあれほど強く言い聞かせたのに、私は日吉への想いを止められなかった。
この戯曲を終わらせよう、これで私が命を奪うのも最後になる。
‘実弾入り’リボルバーを自分のこめかみに当て、目を閉じる。
日吉、心配しないでね。
すぐに会えるから。
今度はいつまでも一緒にいられるから、また花火大会に行こう。
日吉と私の理想郷。
そこに行けるのはそう遠くない。
指に力を加えた瞬間聞こえたのは、この汚れた世界に亀裂が入る音だった。

song by GUMI(悪ノP)/最後のリボルバー

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