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日吉


今日(こんにち)はいい時代だと思う。
甘いお菓子に、可愛い洋服、そして綺麗な音楽。
何もかもがいいものばかりだ。
それは、私の目の前にいる彼氏にも言えることだった。

「詩織さん、どうしましたか。俺の顔に何かついてますか」
「ううん、違うの。ただ日吉がカッコいいなって思っただけ」

そう言うと少し照れたようにはにかむ私の彼氏である日吉。
シャワーで落としきれなかった汗の匂いがした。
それは、部活での頑張りを示しているようで、私は好き。
ポケットからチョコを取り出して口の中へ放り込めば、日吉が眉を寄せながら口を開いた。

「よく飽きませんね、毎日食べて」
「ふふ、だってこれ日吉がくれたチョコと一緒だから。毎日食べても絶対飽きないよ」
「…よくそんな恥ずかしいことをさらっと言えますね」

今度は恥ずかしかったのか、私から顔を背ける日吉。
耳まで赤いって事は、相当恥ずかしかったのだろう。
ほとぼりが冷めるまで私を見まいと決めたのか、日吉は私の方へ顔を向けない。
何ともつれない、照れ屋な彼氏である。
そもそも、きっかけは甘いものが食べたいと私が言ったとき、日吉がたまたま貰ったチョコをくれたことから始まる。
その時、私は好きだった相手にフラれて半分自棄になっていた。
とにかく甘いものを食べないと腹の虫が治まらなかったのだ。
早速貰ったチョコを食べていると日吉がふっと小さく微笑んだ。
それは見たことのないくらいに優しい微笑みで、失恋したばかりなのにきゅんと胸が苦しくなった。
それが恋だと気付くのに時間はかからなかった。
トントン拍子に事が進み今がある。
チョコは既に私の胃の中だ。
実際には、チョコより日吉がくれたっていう事が重要なのかもしれない。
毎日不器用ながらも私に気をつかってくれる日吉に私は頼りっぱなしだ。
それでも嫌な顔ひとつしない彼はやっぱりよくできた彼氏だ。

もうひとつチョコを口に放り込んで私は日吉の腕に抱きついた。
驚いた顔の日吉に私は笑顔を向けるのだった。


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