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日吉


日々私は言葉のあぶくを吐いて生きている。
その言葉の行き先はいつも日吉。
どんなに小さなあぶくでも拾い上げて、私に愛という名の酸素をくれるのだ。
同じ水の中で生きているはずなのに、日吉の方が生き生きしているのは、私が彼の小さなあぶくを拾い損ねているからなのだろうか。
それとも、種類が違うのだろうか。
あれこれ考えても答えは出なくて、仕方なくなって考えるのを止める。
考えれば考えただけ酸素が欲しくなる。
つまりは日吉に会いたくなるのだ。
今も会いたくて仕方ない。
この衝動は何なのか、自分でも分からない。

「なぁ、早坂さん聞いとる?」
「あぁ、うん。あれだよね、数学の提出物の話だよね」
「…聞いてなかってんな」

呆れたようにため息をつく忍足。
あぁ苦しい。
君の言葉には酸素が含まれてないから長い時間いるのは辛い。
早く日吉の教室に行きたいのに、忍足が邪魔すぎる。
酸欠で死んだら君が保証してくれるのか、とかイライラしながら思っていたら後ろからぐいっと抱き寄せられた。
この腕は日吉の腕だ。

「忍足さん詩織さんに何の用ですか。休み時間は限られてるんですよ」
「なんで俺が責められんとアカンの。話聞いてなかったんは早坂さんやで」
「詩織さんのせいにするなんて最低ですね。いきますよ、詩織さん」
「え、あ、うん」

後ろで忍足が理不尽だのなんだの騒いでるけど、そんなの関係ない。
日吉がいてくれればそれで私は生きていられる。
日吉の言葉と行動が私に酸素をくれる。
あと、水もかもしれない。
そこで気付いた。


まるで、水槽の熱帯魚


日吉は酸素であり、水槽なんだと。
だからいないと辛いのだ。
私、日吉なしじゃ生きられない

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