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日吉

春から初夏へ季節が変わっていくのを風で感じながら屋上に寝転ぶ。
数学なんて受けていられない、あんなのは人間がやるものじゃない。
数学なんか物好きがやってりゃいいんだよ。
内心数学へ毒づきながらゴロリ、と寝返りをうつ。
するとその先には男子制服。
あれ、誰かいたのか、と視線を上へずらしていけばそれは日吉だった。
あれ、なんで日吉いるんだろ…?
私の思考を読んだのか、日吉が口を開く。

「先輩、授業はどうしたんですか」
「数学とかいうふざけた授業だったらサボった」
「はぁ…、受験生ってことを自覚してください」
「受験生って言っても、ただの進学テスト受けるだけだし大丈夫だよ」

私がそう言えば日吉は呆れて物も言えない、とでも言うようにまたため息をついた。
ため息つくと幸せ逃げるのにね。
能天気に空を眺めてたら突然日吉が口を開く。

「先輩…いえ、詩織さんは運命の赤い糸、信じますか」
「唐突だね、日吉」
「思い出しただけです」

そっぽを向く日吉。
絶対思い出した、なんて嘘だ。
日吉が私から視線を反らすのは嘘をつくときなのだ。
本人は知らない、私だけの秘密。
くすり、と小さく笑みを漏らせば不機嫌そうに顔を歪める日吉。
そんな顔されても謝らないよ、可愛いから。

「詩織さん、答えてください」
「えぇー…。日吉が教えてくれたら教えるよ」
「……、俺は詩織さんとなら信じます」

いきなり意味が分からない事をほざきだした。
私関係あるの?
私があまりにも呆けた顔をしていたのだろう。
日吉は右手の小指を私の右手の小指に絡めてそっと口付けを落とした。
熱を持つ指と体、そして頬。
胸の高鳴りの中で聞いたのは日吉のこんな言葉だった。

「好きでもない人に聞きませんよ。詩織さんの運命の赤い糸は俺につながってるんです、絶対。他の人には渡しませんからね」



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