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オサムちゃん

これの続き

オサムちゃんと付き合ってはいるが、私も普通の女子中学生だ。四六時中オサムちゃんと一緒ではないし、友人と喋ったりもする。
友人達には彼氏がいることは言っているけれどオサムちゃんだとは言ってない。言ってしまったら噂になるのは目に見えてる。そんな危ないこと、私がやるわけないじゃない。
お弁当をつつきながら、友人達の話す恋バナや昨日のバラエティ番組の話を聞いていた時だった。

「そういやさ、詩織の彼氏って身長いくつ?」
「んー? 177だったと思うけど」
「えー、ないわー。理想的な身長差って15センチやで? 詩織は168やんな? 9センチしか差がないとか…」
「…別に、好きだから気にならないけど」
「年上ならそれぐらい考えて選びいや、ただでさえアンタ身長高いんやし」

余計なお世話だってば。
冗談っぽく言って茶化したけれど、その後頭の中には友人が言った言葉がずっと残っていた。


――
テニス部の練習がない日曜日は最高だ。課題さえ終わらせておけば、一日中オサムちゃんといられる。
散らかった部屋をある程度片付けて、オサムちゃんの横に座る。気付けばオサムちゃんが私を抱き寄せて、膝の上に座らせてたり。それがたまらなく幸せ。
学校や外であんまり一緒にいられないから、その反動でオサムちゃんの家にいるときはべったりと甘える私。オサムちゃんは猫みたいやなあ、と笑いながらその度に頭を撫でてくれる。
やっぱり、好きだなあ。なんて思ってふと思い出す。理想的な、身長差の話。
やっぱり、オサムちゃんもそうなんだろうか。15センチ差が、いいのかな。
オサムちゃんの彼女の理想的な身長は、162センチ。私より6センチよりも低い。
もっと身長、低かったら良かったなあ…。最近は思わなかったことが頭をよぎった。
高い身長はコンプレックスでしかない。最近は忘れていたコンプレックスを思い出して、私の気分はずん、と沈んだ。
いつもあんまり喋らない私だけれど、いつもと雰囲気が違うのに気付いたのか、オサムちゃんが私の顔をのぞき込む。

「どうしたん? 体調悪いんか?」
「ううん、元気だよ」
「ならどうしたん?」
「…笑わない?」
「ことにもよるけど、笑わんようにはするで?」

オサムちゃんはあんまり断言しない。断言するときは断言するけど、確信が持てないときは断言しない。それがなんとなく心地よくて、私は気乗りしないけれど友人に言われたことを口にした。
世の男の人は彼女との身長差が15センチなのが理想的なんだって。私とオサムちゃん、9センチしか変わらないでしょう? やっぱりオサムちゃんも、背の低い女の子の方がいいのかなって。
そう言い終わると、オサムちゃんは何度か目を瞬かせた後目を細めて笑った。

「詩織は可愛ええこと言うんやなあ」
「は、ど、どこが可愛いの」
「俺は身長差とか別に気にせえへんのやけどなあ。詩織は今のままで可愛ええやん」
「え、は、はあ!?」
「あとな、詩織ぐらいの方が腰曲げんでキスできるからキスしやすいんや。学校で自然なキスできるんやで? 身長低かったらそんなこと出来へんやん」
「そ、そう…。ま、まあ、オサムちゃんが気にしてないなら、いいけど…」

オサムちゃんがあまりにも幸せそうに笑うもんだから、私の心臓はやかましく動き出して、呼吸が苦しくなった。オサムちゃんには叶わないなあ。
赤くなっているであろう顔を背けて、私は幸せを噛み締めた。オサムちゃんとお付き合いできて私は幸せ者だ。私のコンプレックスを好きだと言ってくれるのは、オサムちゃんぐらいなものなんじゃないだろうか。
だらしなく緩む頬をむにむにと揉みほぐしていると、後ろから私の頬にオサムちゃんの手が添えられた。お弁当渡しに行った日から、オサムちゃんは頻繁にキスするようになった。なんでもずっと我慢してたからその反動なんだそうだ。
暖かい手に目を閉じてオサムちゃんの方へ体を向ける。ゆっくりと唇が重なって、じわりとオサムちゃんの熱が伝わる。ああ、やっぱり幸せ。とくとくと心地よいリズムを奏でる心臓も、優しく添えられた手も、オサムちゃんのちょっと乾燥した唇も。
私が高校生になったら、遊園地とか連れてってやるって言ってたけど、私今のままでも十分幸せだよ。小さな音を立てて離れた唇。幸せそうに笑うオサムちゃんに飛びついた。

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