QLOOKアクセス解析main | ナノ









土砂降りは私の帰宅を邪魔する様に降りだし、今もなお止もうとしない。
どうして私がこんなところで突っ立ってないといけないのか。
言っておく、私は悪くない、微塵も。
天気予報が告げていた雨の予報に、登校途中ビニール傘を買った今朝。
何の変哲もない透明なビニール傘に名前も書かず傘立てに傘を立てたのが悪かったのかもしれない。
帰ろうと思って傘を見れば、そこには傘の一本も残っていなかったのだ。
無論、私の傘も、だ。
差して帰る傘がないため、冒頭に戻る。
どこの誰か知らないが、勝手に人の傘をとっていくなんて酷いじゃないか。
小さくため息をついてその場にしゃがみこむ。
雨によって空気の温度が下がって寒い。
まだ梅雨の筈なのにおかしいじゃないか。
必死にスカートを引っ張って足元を隠していると、突然影がかかった。
不思議に思って顔を上げたら意外な人物がたっていた。
息を切らして肩で息をする鳳君がいたのだ。
彼の手にはビニール傘。
……もしかして。

「早坂さん、ごめん。この傘、早坂さんの傘だよね?」
「多分、そうだけど…」
「つい魔がさして…」

申し訳なさそうに言葉を紡ぐ鳳君。
彼の話によると、部活がなくなって帰ろうとしたときに初めて傘を忘れた事に気付き、辺りを見回した時に見付けたのが私の傘だったらしいのだ。
名前も何も書いていないビニール傘は好都合だろう。
若干の後ろめたさを感じながら家路についたが罪悪感が拭いきれず戻ってきたらしい。
なんというか、真面目と言うか…。
私の表情から何を読み取ったのかわからないが、鳳君はビニール傘を私の方に押し付けながら言う。

「早坂さん、この傘元々早坂さんの傘だったんだから早坂さんが差して帰ってよ」
「鳳君はどうするの」
「俺は走って帰るから気にしないで」
「気にするよ! 風邪引いたら大変なんだから! 体あってのテニス部でしょ!?」

私の剣幕に驚いたのか、はははと苦笑いを浮かべる鳳君。
全く、風邪なんか引かせたら私が跡部先輩に叱られるじゃないか。
あの人苦手だから出来るなら近寄りたくない。
私の思考を知らない鳳君は困り顔。
仕方ないから傘を受け取り、それと同時に鳳君の腕を引いた。

「いたっ」
「わ、ごめん! 身長差考えてなかった…」
「気にしないで、早坂さん」

身長差を考えていなかった私は壮大に鳳君の頭に傘を当ててしまった。
謝っても謝りきれない。
鳳君は怒った様子もなくいつもの笑みを浮かべるだけ。
なんか、ホントにごめん…。

「早坂さん、いきなりどうしたの?」
「確か鳳君の家の方向、私の通学路だから一緒に帰ろうよ、これなら濡れずに済むよ」
「、このままで…?」
「傘一本しかないんだから当たり前でしょ」

私の一言に顔を真っ赤にさせて狼狽える鳳君。
何でそんな反応するの、え…?
私が呆けていたのが伝わったのか、鳳君は誠に素晴らしい微笑を浮かべて俺、早坂さんの事好きだから恥ずかしくて、と爆弾を投下する。
幸せそうな表情と発しられた言葉に私の顔へ熱が集まってくる。
嘘、何これありえないよ…?
返答出来ず口をパクパクさせる私。
雨が傘を叩く音で無音にならずにすんでいる。
今日以上に雨が傘を叩く音に感謝したことはない。
明日どんな顔して話せばいいんだろう…!
そんな思考の中二人で帰った雨の帰り道。

[ 6/30 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -