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日吉


天気予報が嘘をついた。
今日は晴れるって言ってたのに生憎の土砂降り。
鞄に入れたままの折り畳み傘が憎い。
隣の日吉に気付かれないようにため息をついた。
なんでこんな日に限って雨なんか…。
へこんでる私に日吉がこういい放った。


「仕方ないな、お前の傘に入ってやるよ」
「日吉…?」
「お前の落ち込み方が見ていて痛いんだ。勘違いするなよ」


そう言ってふっと唇の隅に笑みを浮かべる。
見慣れたはずのニヒルな笑みに胸がキュンと音を立てた。
どうしよう、恋に落ちたかもしれない…!
傘を広げ、雨の中へ二人一緒に踏み出せば日吉が傘を持っている私の右手に左手を重ねてきた。
右手が震えて、息が詰まりそう…!
小さな折り畳み傘のしたの私と日吉。
少しよれば触れられそうな距離。
高鳴る胸を押さえることなんか出来ない、どうしよう、このまま私の気持ちが伝わればいいのに。
お願い、時間よ止まれ、じゃなきゃ泣きそう!
でもね、嬉しくて死にそうなの…!

二人で歩いたら長く感じるはずの駅への道のりもあっという間でもう君は行ってしまう。
私はバスで、日吉は電車で。
もうまた明日、なの?
そんなの、嫌だよ…。
この遠くて近い距離がもどかしい。
ホントは手を繋いで歩きたいよ、私と日吉、恋人みたいに歩きたい。
だからね、今半分ふざけて改札口に向かう君に叫ぶよ!


「日吉ー!」
「早坂、まだ用があるのか?」
「今すぐ私を抱き締めて!」
「っ!?」
「……なんてねって、うわっ!?」


私の言葉を真に受けたのか、日吉が私を抱き締める。
嘘、これ夢じゃない?
言った張本人が一番状況を理解できてない。
呆然とする私に日吉は呆れたように言った。


「ったく、お前はどれだけ俺をドキドキさせたら気がすむんだ」
「それ、どういう事…?」
「気付くのが遅い、バカ」


そう言った日吉の顔は赤味が差していて、嫌でもその真意を知らざるを得ない。
嘘、ホントに叶っちゃったの?
嬉しすぎて涙が出てくる。
それを拭った日吉の指の熱が私にじわじわ伝わってそれだけで私は君に溶けそうだ。
日吉だって私をどれだけドキドキさせたら気がすむのよ!
それでも、私は日吉が好きなんだけどね。
天気予報のお姉さんに感謝だ。
土砂降りが好きになった、そんなある日の夕方。

song by 初音ミク/メルト

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