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木手


私はお姫様でもないし、はたまた魔女でもない。
一介の傍観者に違いない。
だからこそ私は誰にもアプローチされるわけでもなく、いつも一人だった。
ポツンと教室の自席で本を読む私なんか、誰の記憶にも残ってやいないだろう。
周りの女子はやれ平古場がカッコいいだの、甲斐がカッコいいだのと騒いでいる。
それは彼女らがお姫様だからで、私には何の関係もない。
なら彼女らにとっての魔女は、ファンクラブなのだろうかと考えると少し笑いが込み上げてきた。
ファンクラブの女子だってお姫様なんだから魔女ではない気がする。
傍観者だと口では言うけれど本当の魔女は私なのかもしれない。
小さく自嘲して本に意識を戻すと、私の前に誰がが立ったようだ。
本に栞を挟んで顔をあげるとそこには殺し屋と言われる木手がいた。

「何のよう、木手」
「あなたに少し質問があるんですがよろしいですか」
「休み時間中なら構わない」
「なら始めさせてもらいますよ」

質問の内容としてはテニス部をどう思っているか、から始まりマネージャーをやる気はないか、という質問へ進む。
そう言えば、マネージャーが辞めたとかいう話を小耳に挟んではいた。
なるほど、私をマネージャーにしたいのか。
媚びを売らない私は最適だろう。
ちょうど放課後をもて余していたため私は頷いた。
すると木手は柔らかな笑みを浮かべて問う。

「毒林檎はお好きですか」
「私は作る側だから。好きでも嫌いでもないさ」
「あなたは食べる側ですよ、私の作った毒林檎を」
「なぜ?」
「意中の姫君を王子になどとられたくありませんから。もちろん毒は惚れ薬ですよ」

そう言ってニヒルな笑みを浮かべた木手に胸が疼いたのは私だけの秘密。


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