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仁王


庭で落ち葉やもう不要になったカーテンなんかに火をつけた。
火があがるところから煙が立ち上がって目に染みる。
カーテンを燃やしたのが間違いだったのか、はたまた落ち葉を燃やしたのが間違いだったのか分からないけれど、もっと煙の出ないものを燃やせば良かった。
そんなことを思っても時すでに遅し。
とりあえず、風下に立たないように気を付けながら燃える火を見ていた。
隣で燃える火を見ている雅治もそう思っているのか、煙が目に染みたらしく涙を浮かべた目をしばたかせている。

「ねえ雅治、」
「なんじゃ。俺らはもう終わりにするって決めたじゃろ」
「分かってるよ。今さら雅治に別れたくないだなんて泣きつかない」
「詩織はそんな女じゃからのう」

雅治はそう言って近くにあった枝で火の近くをつついた。
すでに燃えて灰になったカーテンやら落ち葉やらが崩れて山の形を崩す。
それを目にしてから私は手にしていた写真を火の上に放り投げた。
火にあぶられて変色し、瞬く間に燃えていく写真を私はずっと見つめていた。
雅治にも見つめていてほしい。
これが、私なりのけじめの付け方だから。

「燃えたね」
「燃えたな」
「おしまいだね」
「おしまいじゃな」

そう互いに言葉を交わして、どちらとなく立ち上がる。
今日から雅治とは何の繋がりもなくなった。
ただ、雅治という名の銀色の猫が私になつかなかっただけの話である。
私の冷えた指ではお気に召さなかったらしい。
きっと私の指とは違う、温かい指の持ち主と恋に落ち、その人と恋に落ちるんだろう。
でも、忘れないでね雅治。
私は貴方を愛していたのよ。
今までになかったほどに。
だから、貴方が気まぐれに戻ってくる事をひそかに望んでる。
ね、雅治今でも大好きよ、なつかれてなくても大好きなの。
だから、私はまた貴方を探すんでしょう。

song by 天野月子/銀猫

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