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柳生


私には一人、お慕いしている女性がいます。
仁王君のクラスの委員長である早坂さん。
彼女は控えめに笑う方ですが、媚も売らず気遣いの出来るとても魅力的な女性です。
よく図書室で見かける時には哲学書や恋愛小説など、ジャンルに関わらず多様な本を読んでいらっしゃって、私とよく話をするのです。

「こんにちは、柳生君。今日も新しい本を借りに来たんですか?」
「はい。早坂さんの勧める本があまりにも面白かったのでつい一気に読んでしまいました」
「その本、面白いですよね。私、その作者の本が一番好きです」

そう言って笑う彼女に私の胸はずっと早い鼓動を保ったまま。
私らしくないのは分かっているのですが、こればかりは仕方ありません。
恍惚、とは正に今の私の為にある言葉でしょう。
そう熟語の意味を思い出していると不意に早坂さんが言葉を漏らしました。

「窓の下に、ロミオがいればいいのに」
「ロミオというと、あのロミオですか?」
「うん
私とずっと喋っていられるような、私のスローテンポさにイライラしないような、そんなロミオがいればいいのに」
「…早坂さん、私ではダメですか」
「え?」
「貴女のロミオに、立候補してはいけませんか」

私の言葉に目を大きく開いて、まるで信じられないとでもいうような早坂さんに苦笑が盛れる。
想定はしていましたが、友達としてしか見られていなかったようです。
それでも嫌われてはいないので少しの希望を見いだせないか、私は足掻いてみようと思います。

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