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日吉


クリスマスの朝が待ち遠しかったのは、いつまでだっただろうか。
枕元のプレゼントに胸を踊らせていたあの頃は、こんな風に虚無感を感じることなんかなかった。
年を重ねるごとに、夢が見られなくなるのに苦笑が漏れる。
髪に寝癖をつけたまま窓を開ければ、お向かいの家の窓も開いた。
窓ガラスの向こうから現れたのは、少し色素の薄い茶髪の幼馴染み――日吉がいた。
最近避けられていたからちょっと気まずい。
確か日吉が私をさけだしたのは、中学に入る直前から。
丁度私がサンタクロースの存在を疑い始めた頃からだ。
まあ、関係性なんかないだろうけど。
その頃から深くなった溝は、埋まることなく今も私たちの間にある。
その溝のせいで、今どうすればいいのか分からないのだ。
両者一言も喋らず数分が流れる。
朝の外気にぶるりと身を震わせ、窓を閉めようとしたとき、何かが部屋に飛んできた。
何かと思って視線を向けると、そこには手紙が添えられたラッピングされている小さな箱があった。
拾い上げて窓の外を見ると、少し赤くなっている日吉がいた。
私が顔をあげると、それと同時にピシャリと窓を閉められてしまった。
何がしたかったのか分からない。
日吉に聞こうにも、もう窓の向こうだから聞けやしないし、仕方なく手紙を開いた。
すると、そこに書いてあったのはこんな一文だけだった。

鈍感、気付けバカ

何がバカだ、と箱を開けてみれば、中には指輪。
してやられた、と笑えば玄関のベルが鳴った。
多分照れ屋でぶっきらぼうな幼馴染みに違いない。
私はにやける顔をおさえ、指輪を指にはめてから、階段をかけ降りた。


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