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日吉


はあ、と息を吐けば白く変わってかききえる。
もう冬が訪れ、大分たった。
秋が短かったせいか、身に堪える寒さにぶるり、と体を震わせる私に対して、隣を歩く日吉は頬を赤くしながらも平気なようだ。
さっきまでテニスをしていたのだから当たり前と言えば当たり前なのだが、それがあまりにもすごいことのように感じられた。

「日吉、寒いねえ」
「いきなりなんだ。冬が暑かったら問題だろ」
「それはそうだけどさー」

マフラーを口元まで引き上げると、日吉がため息をついた。
大方、私の寒さに対しての耐性についてだろう。
毎年横にいるから、いい加減私の寒い発言に呆れたのだと思う。
でも仕方ないじゃないか、寒いものは寒い。
制服のポケットに手を突っ込んでみても、大して温かさに差はない。
どうしたら温かくなるかな、と考えていたら、日吉がそこで待ってろ、と言い残してコンビニに姿を消した。
何か用があるなら、早く済ませてほしい。
こんな寒いなか、外でまたされる身にもなってほしい。
そんな私の願いが通じたのか、日吉はすぐにコンビニから出てきた。
手に二つの中華まんを持って。

「俺の奢りだ、食え」
「え、でも…」
「寒いんだろ、食えば多少ましになる」

半分中華まんを押し付けて、日吉は歩き出した。
時折中華まんをかじるのがなぜだかカッコいい。
不器用な優しさに笑みを漏らしながらも、日吉の隣に並ぶ。

「ありがとう、日吉」
「ふん」
「何かお礼出来ればいいんだけど…」
「なら今日がなんの日か思い出せ」

日吉が投げた言葉に、私は少しの間考えてから答えを導き出した。
今日は日吉の誕生日だった。
私としたことが、すっかり忘れていた。
だから朝からどこかそわそわしていたのか。
まったく、素直じゃないんだから。

「日吉」
「なんだ」
「誕生日おめでとう」

その一言に、日吉の顔がほころんだ。
嬉しそうな顔を見て、私まで嬉しくなる。
どちらからというわけでもなく繋がった手と手は、冷たかったけどなぜか暖かかった。


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