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一月十二日。
カレンダーを見て気付く、そうか今日は俺の誕生日だったか。
別にガキみてえにギャーギャー騒ぐ年でもねえ。でもなんとなく嬉しいんだよな。
あいつらに何かを求めるわけじゃねえけど、行動によっちゃ今日のメニューを減らしてやってもいいかもな。
なんてちょっと甘い考えが頭をよぎる。今日ぐらいは、特別だからな。

―*
さて、放課後になった。
休み時間はひどいもんだった。初めて貼り付けた笑みが剥がれるかと思った。
休み時間のたびに学年関係なしにクラスに訪れる馬鹿女達。
祝いの言葉ぐらいなら聞いてやらんこともないが、甘ったるしい香水のにおいを振りまきながらプレゼントを押し付けてきやがる。
正直、迷惑でしかねえ。俺にも都合あんだけど。
自己満足のプレゼントに、猫なで声。そこには下心が透けて見えて、吐き気がする。
いつもは話しかける勇気すらないくせに、ちょっときっかけがありゃこの様だ。
女は単純だな。内心で嗤いながら荷物を持ち上げた。
ああ、プレゼントはクラスの男子にやったから俺の手元にはなにもねえよ?
人間なんてもんは、ちょっと演技して誘導してやればこっちの思い通りになってくれるから都合がいい。
俺の評価は落とさないような方法で処分したんだから、俺も男子にも利益がある。まさに一石二鳥。
ふは、俺って頭いい。まあ今に始まったことじゃねえけど。
軽い荷物を肩から下げて、体育館へ向かう。
珍しく部室の鍵が開いていたから中に入ってみると、珍しいことにスタメン全員がそろっていた。
しかもすでに着替えを済ませて。うわなんだこれ気持ちわりい。

「花宮、遅かったじゃん」
「は? 俺は通常通りに来たけど? お前らが早すぎるんだろ」
「そんなことないって。そういや、ドリンクの粉が切れてるって岡崎が騒いでたけど」
「ドリンクの粉が切れただ? アイツ何やってんだよ、使えねえな」
「今買いに言ってるからそういってやるなって。ドリンクないんじゃ練習しても仕方ないから、俺らここで待ってたんだけど」
「そういうことなら仕方ねえな。ったく、アイツには後できっちり言ってやらねえと」

マネージャーの岡崎に悪態をつきながら、着替えるために鞄からTシャツとハーフパンツを出す。
そういやこいつら誕生日について何も触れてこなかったな。忘れてんのか?
まあ別に祝って欲しいわけじゃねえからいいけど。
そう思いながら着替えを済ませた時、いつものように眠りこけていた瀬戸がもぞりと起き上がった。
目覚ましなしにおきるなんて珍しい。今日のこいつら、なんか気持ちわりい。
ベンチに座って岡崎を待っていると、なにやらどたどたという足音が部室の外から聞こえてきた。
やっと帰ってきたか。文句を脳に浮かべながら、俺は岡崎が姿を現すのを待った。

「まこまこー! ごめんね、粉買うの忘れてた! それからハッピーバースデー!」
「テメ……むぐっ!?」
「やったね! 瀬戸ちゃん、原君成功したよ!」
「よくやった、岡崎」

……状況がイマイチ理解できない。
とりあえず岡崎が顔に何かを全力でぶつけてきたのは分かった。
それがやわらかかったのは良かったんだが、岡崎や瀬戸、原が喜んでいるところから推測するにこれはケーキなんだろう。
誕生日にケーキはつき物だが、主役の顔にケーキぶつけるってどういうことだ、オイ。
クリームまみれになった顔を手で拭い、岡崎に問う。

「岡崎、これはどういうことか説明しろ」
「ん? まこまこの顔にケーキをぶつけたよ! ケーキは私の手作りです」
「……なんで顔にぶつける? その必要は、ねえよなあ?」
「だって瀬戸ちゃんと原君がぶつけろって言うんだもん。ザキと古橋君は何も言わなかったから同意なんだろうと思ったんだけど」
「……。お前ら、練習五倍」

俺の怒りのみで形成された言葉に、四人の顔が真っ青になる。自業自得だ、バァカ。
このあほなマネージャーが提案に頷くことを分かって言って、しかもそれを聞いていながらとめなかったんだからこれは当然だよな?
とりあえずこいつらにかける慈悲なんてもんはさっき消滅した。せいぜい苦しめ。
それから、岡崎だ。こいつには重要なことをさせるつもりだ。

「岡崎、テメェは部活終わるまでにケーキ作れ」
「あれ、仕事はいいの?」
「こいつらにやらせる。俺の誕生日にケーキがないなんてこと、許されるはずねえだろ。遅れたらこいつらと同じ目にあわせてやる」
「うわ、それは勘弁して! 作るから!」
「チョコ以外認めねえから」
「ウィッス!」

家庭調理室に向かう岡崎を見送ってから、俺は四人に向き直って言った。

「さあ、誕生日パーティでも始めようか?」

笑顔の俺とは逆に、四人の顔は真っ青を通り越して真っ白になっていた。
ハッ、ざまあみやがれ!


――――
初の霧崎第一がこれって…。
しかも皆祝う気がない件について。
花宮好きなのにこんな話になってしまった…。

Happy Birthday花宮!
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