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珍しく瀬戸がおきてる。私が部活に行くために瀬戸の席の横を通ろうとすると、がしっとスカートをつかまれた。え、なんなの……。
驚いて何が起こったのかイマイチわからない私を、眠気の残るけだるそうな目で見上げる瀬戸君。私、瀬戸君に何かしたっけ……? 全く記憶にないんだけど、私何かやっちゃったのかもしれない。
とりあえず瀬戸君を不快にしたのなら謝らないといけない。私が覚えていないだけで、瀬戸君は私にされたこと覚えてるのかもしれないから。
びくびくしながら口を開こうとしたら、先に瀬戸君が言葉を紡いだ。

「なんでそんなにびくびくしてんの?」
「え、何でって……」
「岡崎さ、俺のことだけ怖がってねえか? なあ、何で俺を怖がるんだよ。俺なんかしたか?」

瀬戸君は何気ないように言っているけれど、その言葉は私には痛くて怖いものだった。だって瀬戸君の言ったことは本当のことだから。
何か理由があるわけじゃない。でも、瀬戸君のことが怖い。多分瀬戸君の身長と、バスケしてるときの目がダメなんだと思う。
平均身長ほどしか身長のない私からすれば、瀬戸君はどれだけ無害な人間であろうと巨人なのであって。見下ろされるのは瀬戸君が思ってる以上に怖いのだ。
あと瀬戸君の目は、獲物を射止めそうなほど鋭くて、それが怖い。前たまたま自動販売機にお茶を買いに行った帰り、水道で瀬戸君とばったり会ったことがある。
そのときふとあげられた瀬戸君の顔。ばちりと冷えた鋭い眼と目が合って、理由もなく逃げてしまった。そこから瀬戸君の目がどうしても怖い。
これは言ってしまってもいいのか悪いのか。考え込んで黙ってしまった私に、瀬戸君は言う。

「多分、身長のせいだと思うけど。俺、別に岡崎のこと傷つけようとか、全然思ってないから」
「そ、それは分かってるんだけど……」
「うん、知ってる。岡崎は馬鹿じゃないし、理由なしに他人を嫌わない。嫌われるのも嫌われるのも怖いんだろ」
「なんで、瀬戸君それ……」
「見てれば分かる、俺、ずっと岡崎のこと見てたし。嫌われたくないから余計なこと言わずに黙ってて、でもその分小説で自分の考えとか理想とか書いてるんだろ。全部、知ってる」

――だって俺とお前、似てるから。だから多分好きなんだろうな。
そう、瀬戸君は爆弾を落とした。さらっと言われたもんだから最初スルーしそうになったけど、私今瀬戸君に告白されたん、だよね……?
自意識過剰でなければそういうこと、なんだよね? それなのに、何でこんなにあっさりした空気なんだろう。瀬戸君照れてもいないし、逆に真顔で私の顔凝視してるんだけど。
これ、私なんて答えればいいの? いきなり言われても頭ついていかないし、付き合うとか良くわかんないし。そもそも瀬戸君に恋心を抱いてるわけでもないし。
ぐるぐるとあれでもないこれでもないと言葉を組み立てては崩しを繰り返していると、瀬戸君が少し目を細めた。

「今すぐ返事はしなくていい。どう考えても、俺が振られるだろうし。岡崎が俺を好きになったときに、返事してもらえればそれで俺は満足だから」
「え、でもそれじゃ……」
「大丈夫だ、待つのは慣れてる」

寝てればすぐだろ、とあくびをした瀬戸君に少し胸がきゅんとしたのは、私だけが知っている秘密。
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テーマ「人外ファンタジー」
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