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私の高校生活の楽しみは、なんと言っても学食で食べる昼食だ。食い意地がはってるとか何を言われても構わない。大体、食べることは三大欲求の一つだぞ、食い意地がはってることは悪いことじゃない…と思う。
別に私太ってないし、食べても問題ないもん。あと学食がおいしいのが悪い。こんなの学食が私を呼んでるのと同じだ。だから私は悪いんじゃない。
ぱきっと割り箸を割って、本日の昼食へ向き直る。今日は親子丼だ。友人が昨日食べていたのを見て、どうしようもなくおいしそうに見えたから今日は親子丼。明日は何食べようかな、日替わり定食にしようかな。
そんなことを思いながら親子丼を口に入れる。あ、やっぱりおいしい。幸せをかみ締めていると、前の席に見慣れた男が座る。あああ、何でお前がここにいるんだ…。
割り箸をへし折らん勢いで噛む私を無表情でその男は見つめる。お前の顔はできるなら食事中だけは見たくなかったよ古橋!

「奇遇だな、瑞希。やはりこれが運命なのか…?」
「意味わかんないんだけど。頭おかしいんじゃないの? 花宮に頭蹴ってもらったら?」
「俺の前でほかの男の名前を出さないでくれ、嫉妬するだろう…。ああ、そうか、嫉妬させようとしているのか? 安心してくれ、俺はお前しか眼中にない」
「私はお前以外しか眼中にねえよ! お前はアウトオブ眼中だ」

本当にこの古橋という男は意味が分からない。意味が分からないというよりは気持ち悪いの方がしっくり来る。だって何を隠そう、こいつはストーカーなのだから。
朝私の家の前にいるのは当たり前。学校でも休み時間は何食わぬ顔で私の隣の席を占領している。ごめんね伊藤君、君は何も悪くない。
それにくわえ、なぜか帰り道は数メートル後ろの電柱から顔を覗かせているし、かと思えば玄関で私の帰りを待っているときもある。
無駄に顔のつくりがいいからお母さんには気に入られてるし、お父さんもあまり嫌な勘定は抱いていない様子。外堀から埋めていくとは、流石に霧崎に通うだけのことはあると思った。ここで関心なんてしたくなかったけど。
そりゃ最初告白されたときは嬉しかったけどさ? いきなり長身のイケメン(ただし無表情)に告白されるなんて予想もつかなかったし、女子として告白されるのは夢だったし?
でもそれは古橋がこんな奴だからだって知らなかったからだ。知っていたら嬉しくもなんともない、願い下げだ。ストーカーって犯罪だからな。

「やっぱり瑞希はおいしそうに食うな。ずっと正面から見たいと思っていたんだ」
「気持ち悪い」
「気持ち悪くなんてない。俺はただお前のことを全部知りたいだけだ。俺の嫁になる女のことだ、全て知っておきたいと思うのは当たり前のことだろう?」
「気持ち悪い。病院にいってきてくれる? もちろん頭の」
「産婦人科に行こう? まさか…俺の子が…!」
「いねえよ!」

コイツホントに頭大丈夫なんだろうか。本気で頭の病院に連れて行ったほうがいい気がしてきた。花宮に相談してみるか、彼なら何とかしてくれそうな気がする。
もうこれ以上古橋の顔を見たくなんかない。親子丼をかっこんで、席を立つ。次体育だから急がなきゃ遅れちゃう。体育の先生、遅れると容赦ないペナルティ課してくるから嫌なんだよ。
返却口へ歩き出した私の隣をさも当然のような顔で歩く古橋。…お前いつの間に全部食ったの。私より食い始めるの遅かったよね?
……考えるのはやめよう、古橋の奇行は考えるだけ無駄だ。無心で歩けばいい、うんそうだ。
隣を見ないようにして歩いていたら、すっと古橋の手が伸びた。なんだろうと思えば、私が使った割り箸をつまみ上げ自らの懐へしまった。うわあ、ありえない。
本当にコイツ気持ち悪いぞ、そろそろ警察に相談していいレベルだと思うんだけど。……今日の帰りにでも警察署にいこうかな。
ぼんやりとそんなことを考えていたら、古橋が私のトレーを持ち上げて返却口へ返した。こういうところは紳士でいいと思うんだけどなあ。
私へ向き直った古橋はなにやら袋を差し出してくる。何これ。古橋に問えば、さも当然というような口調でこう返ってきた。

「何って、俺の体操服とジャージだが。今日体操服忘れたんだろう?」
「何故知っている」
「瑞希のことなら全部分かる。俺はお前の後の時間だから着ていいぞ。まだ俺は着ていないから着れるだろ?」
「あのさ、身長差分かって言ってるの? 私が古橋の体操服着たらぶっかぶかで見れたもんじゃなくなるでしょ」
「何を言ってるんだ、それがいいんだろう? 俺の体操服が大きくて丈が余ってるのがいいんだ。早く着替えてきてくれ」

……前言撤回、コイツは紳士なんかじゃなくて変態だった。
どこか嬉しそうな顔に思いっきり体操服の袋ぶつけて、私はカフェテリアを後にした。てめえの体操服着るぐらいなら花宮に借りるっつの!
友人に体操服を借りに行く私を少しはなれたところからカメラ片手に見ている古橋はそろそろガチで死んでくださいどうぞ。


――
反省してます、ごめんなさい。
こんなの書きましたが古橋君好きです、嘘じゃないです。
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