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※過去捏造注意

役立たずだとか、もういらねえとか。
もう言われなれた言葉を聞き流して、俺は平気な振りして大股で陰口を言ってるやつらの前を通り過ぎた。何を言われようと、構わない。どうせ、何も知らない奴らの負け惜しみだ。悔しかったら俺を抜いて一軍になればいいのにさ。
それができない奴らの八つ当たりにも似た言葉、真に受けることはないわけだし。飄々としてて一番精神的にダメージ受けると思って言ってるんだろうけど、それは全くのお門違いって奴。ラフプレーしてる奴が陰口程度で精神的なダメージ受けると思ってんの?
馬鹿らしい。ガムをかみながら何故だか少しイラつきながら校内を歩き回った。目的地はない。なんとなく歩いてこのイライラを収めたかっただけだ。
滅多に人が来ない中庭のベンチに腰を下ろして空を見上げた。そういえば、俺にはどうしても思い出せない記憶がある。中学三年の今頃の記憶がぽっかりと抜け落ちてる。
何があったのか、ホントに思い出せない。思い出せないってことはそんなに重要な記憶じゃなかったのかもね。人間の頭なんて都合よくできてるんだから。
でも。
どうしても忘れられない顔がある。空を後ろに、困ったように笑う女の顔。何回やっても、それ以外の顔を思い出せない。
ってか、顔だけしか覚えてないんだよね。名前も学年も、部活も声も何もかも。ただ呆れたように笑って、俺に手を差し出す。そこしか覚えてない。
もしかしたら、俺のない記憶にそいつが関係してるのかもしれない。声も、体温も忘れちゃったけど、さ。
あー、部活に行く気も起こらない。昔のことを思い出すと決まって無気力になる。正直、昔のこととがどうでもいいんだけど、それでも考え始めるとキリがないんだよね。

「あーあ、アホらし」
「オイ、お前俺の従兄弟の膝壊したんだろ、ふざけんな!」
「は?」

突然聞こえた声に顔を向けると、いきなり左頬を殴られた。準備ができてなかっただけに受身が取れなくて、俺の体は面白いほど転がった。
うわー、痛い痛い。これ腫れちゃうかな。またごまかすのめんどくせえな。教師ってうるさいんだよなあ、何があったかなんとなく察してるくせに生徒の口から言わせようとするのとかホント反吐が出る。
ラフプレー集団の一人が怪我したりしたんなら、それはその関係に決まってんじゃん。何も知らないよって無知を気取る教師も、クラスメートもホントうぜえ。
とりあえず起き上がらないとフルボッコにされる。距離をとりながら起き上がって、俺は相手の攻撃を流したりしながら向こうが諦めるのを待つ。
ここで俺が反撃したらそれこそ俺に非があることになっちゃうからね。そうなって困るのは俺をはじめとしたバスケ部。花宮に説教されるのだけはごめんだし。
適当に相手を流しながら、俺はふと昔を思い出した。そういえば昔は喧嘩ばっかしてたっけ。髪の色がどうだとか適当な理由つけられて、毎日のように喧嘩売られてたなあ。
今みたいに流してたわけじゃないし、俺も相手に殴りかかったり鉄パイプで殴ったりしてたっけ。懐かしいなー、今はもうそんなことしなくなったけど。

『バイバイ、もう会えないかもねえ』

そんな言葉が頭をよぎった。あれ、これ誰が言った言葉だっけ?
一瞬ぼんやりした瞬間、みぞおちに蹴りを入れられた。うわ、いってえ……。
一瞬息が止まって、そこからちょっと遅れて膝から崩れ落ちる。よりにもよってみぞおちとかツイてない。
地面にしゃがみこんでげほげほと咳き込む俺に満足したのか、相手はいつの間にかいなくなっていた。なんなんだよマジで。
仰向けに転がって、息を整える。制服がすごいことになってるだろうけど、もういいや。今更気にしたところで遅いんだし。
悔しいとか悲しいとか、そんな感情はわかなかった。喧嘩に負けたら何かしら感情が浮かんでたはずなんだけどなあ。もう痛いとしか感じないや。俺も年取ったなあ。
なんて感傷に浸っていると、ぬっと影が差した。前髪でうまく見えないけど、花宮たちじゃないっぽい。
誰だろ、また理不尽に暴力振るわれるわけ? 身構えたとき降ってきたのはくすくすという笑い声、だった。

「原君、相変わらずだねえ。また負けて転がってる」
「え」
「制服そんなに汚して明日からどうするの? まさかその汚い制服着るつもり?」
「ちょ、え……?」

懐かしい、声だった。じわりとしみこんだ声が俺の抜け落ちた記憶をぎゅるぎゅると引き戻していく。
俺があまりにも生意気だから、仲が良かった女を人質に取られて。それで、俺もそいつもひどい怪我負わされて。もう死んだって、死んでなくても俺と会うことはないって思ってたのに。

『バイバイ、もう会えないかもねえ』

それをマジで信じてショック受けて。ひどい嘘をついたもんだなあ。いつも俺が突き放しても喧嘩の後には絶対俺に手をさしべて笑ってさあ。ホント、よくわかんない奴だったけど今もそれは変わってない、ホントイラつくほどに中学時代そのまんまだ。
またあの頃と同じように空をバックに笑って手を差し出すそいつ。ホント、変わんない。その変化のなさに眼を見開いて、それから呼吸を整えて。
思い出したよ、お前の名前。何で忘れてたのか俺もわかんないや。

「ほら病院よって帰ろ?」
「余計なお世話だって。ホントいらないことばっか言うよね」
「心配して言ってるんだよ? 原君素直じゃない!」

知ってるよ、そんなこと。今に始まったことじゃないじゃん。
手を借りて起き上がりながら内心で言ってやった。今度は余計なことしないでよね。
痛い目見るのは俺だけで十分なんだからさ、ね、岡崎。


――
image song……ドーナツホール/ハチ
なんか聴いてたらこんな話が出来上がりました。
何が書きたいのか正直分からない上にコレジャナイ感が半端ないです。
冷静になったら消します。
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テーマ「人外ファンタジー」
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