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「古橋、無表情でこっち見るな」
「すまない、何か意味があったわけじゃないんだが」
「意味がなくても、見られてる方はなんかやったか不安になるでしょ」

呆れたような、怒ったような。言葉で表現できなきような声色と表情で、岡崎は俺に文句を言ったあとため息をついた。
女にしては低い声が掠れて、絶妙な色気を出している。おそらく本人は無自覚。だからこそ、タチが悪い。
胸のときめきを顔に出さないよう細心の注意を払いながら、岡崎の方をまたじっと見つめ始めた。
何か意味があったわけじゃない。そんな言葉、嘘に決まっているだろう? 意味がないのなら、最初から見てなどいない。
今ほどポーカーフェイスなことに感謝したことはない。ザキなら顔が緩みきっているか、顔を赤くしていただろう。アイツはすぐ顔に出るからな。
窓の外でパタパタと音を立てながら降る雨。湿度が高くなるからあまり好きではないが、今日、今この瞬間だけは雨が悪くないような気がした。
早く止まないかな。
ぼやくように言った岡崎に、俺はそうだな、と機械的に返した。そんなこと、全く思ってなんかいないのにな。
突然降り出した雨。岡崎は傘を持ってきておらず、おまけに学校の貸出用の傘もなく、足止めをくらっているのだ。
俺は帰ろうと思えば帰れる。小さくボロいが折りたたみ傘は持っているから、帰りたいと思えば岡崎を置いて帰ることも可能なのだ。まあ、そんなことをするつもりもないが。

「古橋部活…ああ、そっか、テスト週間だからないんだっけ」
「ああ。特に心配な教科はないからな。特別勉強する理由がないから暇だ」
「嫌味? 世界史低空飛行の私への嫌味?」
「花宮じゃあるまいし、嫌味を言った覚えはない」

世界史のプリントを鞄から出した岡崎に言ってやれば、露骨に嫌な顔をされた。…なぜだ。
岡崎がプリントを埋めだしたのを、隣の席からじっと見る。第一次世界大戦か、またややこしいところが範囲だな、世界史は。
頭をかきながらペン先でプリントをこつこつと叩きだした岡崎に、ヒントを少しだけ出してやった。
岡崎は元は悪くないんだから、やれば上がるだろうに。なんてそんなことを思いながら、俺は黙っておいた。
黙っておけば、またこんな風に一緒にいられるかもしれない。そんな、ずる賢い考えは岡崎には秘密だ。
窓の外の雨はいつの間にかやんでいた。
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