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北風が容赦なく吹き付けて、長く伸ばした髪を舞い上げる。落ち葉も一緒に舞い上がって、視界が一瞬赤や黄色で埋まった。

「寒い…! 今日天気予報こんなに冷え込むって言ってなかったのに……!」
「バァカ。北風で体感温度は低く感じるでしょう、っつってたの聞いてなかったのか?」
「聞いてない! バスに間に合いそうになかったから急いで家出たし」
「お前はどうしようもねえ馬鹿だな」
「花宮最低、眉毛もげろ」
「は!?」
「二人とも落ち着け、岡崎は明日から気をつけろ」

古橋の仲裁で口げんかに発展しそうだった言い合いが一度終わる。古橋はいつも私と花宮の喧嘩の仲裁に入る。それが当たり前になってきている辺り、どれだけ私と花宮が言い合いをしているのかを実感する。
別に言い合いがしたくて言い合いをしてるんじゃない。できるなら花宮とは喋りたくない。頭のつくりが違うから会話が成立しないから。これは結構真面目に。
吹き付ける北風にブルブル体を震わせていると、私の頬に何か温かいものが触れた。横を見てみると、瀬戸が何かを私の頬に押し付けていた。
なんだろうと見てみると、それはココアの缶で。瀬戸が私の手に缶を握らせるもんだから、私は何が起きてるのかイマイチ理解できなくて瀬戸とココアの缶との間で目を言ったり来たりさせた。

「寒そうだから。飲めば少しは変わるんじゃないか?」
「瀬戸ありがとうー! ココア好きー!」
「だと思ってさっき買ってきた」
「瀬戸ー、何々岡崎のこと狙ってんのー? やけにタイミングがいいじゃん?」
「原は何を言ってるんだ、別に下心はない。岡崎は俺らと違ってスカートだろ、俺らより寒いだろうと思ってココア買っただけだ」
「何このイケメン」

瀬戸にもらった缶を開けると、ふわっと甘いいい香りが立ち上る。やっぱりココア好きだなあ。瀬戸はほんとにイケメンだ、寒いだろうと思って、とか。なかなかそれをさらっと言ってのける人はいない。花宮も少しは見習って欲しい。
缶が熱くてちびちびココアを飲んでいたら、私の手から缶が消えた。缶を取り上げた犯人を見ると、それは花宮で。
口元までぐるぐるに巻いたマフラーをずらして、私の手からひったくったココアを一気に飲み干した。
……なんで私のココア取り上げたの、花宮はマフラーしててあったかいのに。よくよく考えれば、バスケ部は全員マフラーしてる。
体が資本だから当然といえば当然だけど、私に貸してくれてもいいと思う。私スカートなんだから。男子はズボンであったかいだろうけど、女子は北風がモロ生足に吹き付けるんだぞ……!
そんなことはさておき、今重要なのは花宮が私から奪ったココアだ。ココア、私の瀬戸からもらったココア。なんで花宮に奪われなきゃなんないの!?
空き缶を私に押し付けながら、花宮は顔をしかめながら言った。

「よくこんな甘いの飲めるな。だから太るんだ」
「う、うるさいなあ! 四六時中飲んでるわけじゃないもん!」
「嗜好品でも太るぞ、だからお前はいつまでたってもブタなんだよ!」
「花宮最低! 大っ嫌い!」
「ふはっ! お前に嫌われてもなんとも思わねえよ、自惚れんなバァカ!」
「花宮も岡崎もそれぐらいにしとけよ、ほらこれでも食って仲直りしろよ」
「ザキいないなあと思ったら肉まん買いに行ってたわけ?」
「おう、なんか食いたくなって」

ザキから肉まんを受け取って、熱いうちに下の紙を剥がしてかぶりついた。あつあつの肉まんは寒い中では一番のご馳走に思えた。
花宮がさっきには言い過ぎたと思ったのか、一回マフラーを外して端っこのほうで巻きなおして私の首に残りを巻いてくれた。マフラーと肉まんで機嫌が直るなんて単純なのかなあ。なんて思いながら、私は残りの肉まんを口へ入れた。
後ろで原や古橋が、花宮やるときはやるじゃん、なんて小声で言っているのには気がつかないまま。
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