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近くにあっても、触れられないものは多々ある。
ミカサしかり、リリィしかり。まあ、ミカサはあの死に急ぎ野郎しか眼中にねえからだが。
立体機動装置を装着して、空を見上げるリリィの横で俺は何も出来ずにいた。
成績が悪くもよくもないリリィ。志願するのは調査兵団、らしい。

「なあ」
「何、ジャン」
「お前なんで調査兵団なんか志願するんだよ。憲兵団は無理でも、駐屯兵団なら何とか入れるだろ」
「死に場所がほしいんだよ。私、親が巨人に食べられたんだ。そこから一人でさ。駐屯兵団なんかに入ったら、皆が死んでいくのを見てなきゃいけないでしょ? そんな寂しいこと、いやだ」

――一人は寂しいよ。
リリィはそう、なんでもないように口にした。なんでもないように言ってるが、目は寂しそうだった。
死に場所を探す。そうやって調査兵団に志願する奴は少なくない。生きる目標を失った者、生きる意味を見出せない者、死にたがり。
その理由は様々だ。別にそれを批判する気もないし、否定する気もない。それがソイツが導き出した答えであり、ソイツの人生なんだから。
だが。コイツの理由だけは肯定できねえ。一人になりたくねえ、ただそれだけで調査兵団に希望を出すのは許せねえ。
俺が憲兵団に入団して、内地で暮らせる権利を手にしたら。少なくとも俺は死なない。俺が憲兵団を志望するのは、安全な暮らしの保障がほしいからだ。それはリリィもよく知ってるはずだ。
なのによく俺の前でそんなこといったな。正直だけどよ、俺はそればかりは頷けねえよ。

「リリィ、お前馬鹿だろ」
「そりゃジャンに比べたら馬鹿だよ」
「ちげえよ。お前は大馬鹿だ。一人になりたくねえから調査兵団に入るなんて、とんでもねえ馬鹿だ」
「……うるさいな。一人になるのは、もう嫌なんだよ。寂しくて、辛くて、苦しい。生き残ったのがなんで私なんだろうって。そんな思いもうしたくないよ」
「俺がいるだろ。俺は憲兵団志望だ。死ぬ確率は低いだろ」

俺がそういえば、俺の肩までしかない頭が動いた。俺を見上げるリリィの目には驚愕だけが浮かんでいた。
オイオイ、今更気付いたのかよ。ったく、お前は馬鹿だな。
リリィの頭をぐしゃりとかき回してやれば、リリィは泣きそうな顔をして俺の腹を殴った。痛くはねえけど、いきなりなんなんだよ。
泣いたり殴ったり忙しい奴だな。小さくもらせば、文句の変わりに嗚咽が聞こえた。
あー、本気で泣くなっつの。俺が泣かせたみてえだろ。まああながち間違いじゃねえけど。
マルコに後で小言言われるかもしんねえな。部屋で何を言われるのか想像して、俺は小さくため息をついた。
泣きじゃくるリリィは、しゃくりあげながら無理矢理言葉を紡ぐ。

「なんで、そんなこと言うのさぁ……!」
「リリィが大切だからに決まってんだろ。それぐらい分かれよ」
「だって、だって……! それに、気付いたら、また離れたときに、寂しくなる……!」
「はあ……。おいリリィ、よく聞け。俺はお前を一人にしねえ。お前より先に死にはしない。今日からお前のために生きてやるよ」
「え……? ジャン、何言って……」
「もし。もし巨人がいなくなった世界になったとき、お前が幸せでなかったら、俺がリリィがリリィとして産まれたことを幸せだって思えるように、一緒に生きてやるよ。それでいいだろ」

――だから、死に場所がほしいからって調査兵団志望すんな。
俺が照れ隠しで顔を背けると、少し間があってから少し鼻声ではあるがうんという返事が聞こえた。
それでいいんだよ、お前は幸せになってから死なねえとなんねえんだよ。じゃねえと、お前の親が命に代えてまで守った意味がねえだろうが。
今はちっぽけな太陽にしかなれねえけど。もう少し大人になったそのときには。俺がリリィの道を、幸せを、全てを照らし導ける太陽になってやるよ。
……なんて、夕焼けに染まる空の下、一人で誓った。


――
image…AWAYOKUBA-斬る/UVERworld
少年さんのリクエストで書かせていただきました。
ジャン相手で書こうと思ったらこんな話になりました、甘いのかシリアスなのか……。
微妙な話になってしまい申し訳ありません……!
手直し、持ち帰り等は少年さんのみ可!
リクエストありがとうございました!
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