QLOOKアクセス解析If I were you, | ナノ

心が、痛い。膿んだ傷がずきずきと痛む。
どうしてこんなことになったんだろう。僕はただ故郷に帰りたいだけだったはずなのに。
余計な哀れみなんか抱いたら、僕が辛くなるだけなのに。どうして、こんなにも彼女を愛しいと思ってしまうんだろう。
ライナーが壊れていく様を見て、僕はああなりたくないと思って一歩引いたところにいたはずなのになあ。所詮僕もライナーと同じだったってことか。
これ以上彼女に――エレルアに会ってしまったら僕がおかしくなりそうな気がする。……いや、もう僕はおかしいのかもしれないけれど。
故郷へ帰るために人類の敵にならなければならないこと。エレルアのそばにずっといたいと願うこと。
正反対なそれは、僕の中で交差して僕の心を傷付けていく。泣きたくない。泣いてしまえば僕の弱さを、優柔不断さを認めてしまうことになる。
でも。僕は怖い。僕はエレルアの記憶を奪って、封じ込めた張本人で。
僕が巨人だってこと、知られたらエレルアは僕を怖がる? それとも……他の巨人と同じように駆逐するんだろうか。
嫌だ。そんなの、絶対に嫌だ。他の人に怖がられるのは、憎まれるのはいい。僕はそれだけのことをやったんだから。
でも、エレルアにだけは。エレルアにだけはそう思われたくない。彼女の中でだけは、僕は優しくて仲間思いで優柔不断な“人間”でいたい。
ね、そう思うのにこの状況はなんなんだろう。僕が望んでた未来? それとも、都合のいい夢? ねえ、なんなんだろう?

「ベルトルト」
「ねえエレルア。僕、君に隠してたことがあるんだ。それを言ったら、君は僕を嫌いになるかもしれない。エレルアにだけは、知ってほしいんだ」
「ベルトルト。私は嫌いになんかならない。短い間ではあるけれど、一緒に過ごしてベルトルトがどんな人なのか理解はしたつもりだ。だから、大丈夫」
「なら言うよ? エレルア、僕はね――」

――超大型巨人なんだ。
そういった瞬間、エレルアの目に驚きと戸惑い、それから殺意が浮かぶ。
やっぱりそんな反応をするんだね。仕方ないのかな、人類の敵だもんね。
でもね、そんな反応されても君を愛おしいと思う僕はおかしいのかな。殺意の浮かぶ目に見つめられても胸が高鳴るんだ。
どうして。そんな言葉がエレルアの唇から漏れた。
どうしてって言われても、僕が巨人なんだから仕方ないじゃないか。それ以上でもそれ以下でもない。
怯えて、どうするべきのなのか分からなくなったんだろう。エレルアは僕に背を向けて走り出そうとした。
逃がさないよ。逃がすわけないじゃないか。ミカサたちを呼びに行くんでしょ? それくらい、分かってるよ。
僕、エレルアだけは手放したくない。こんなわがまま、許してもらえないかもしれない。でも僕はエレルアだけは傷付けたくないし、君にずっとそばにいてほしいと思うんだ。
抵抗するエレルアを抱きしめる。僕から逃げないように。僕から離れないように。ねえエレルア、僕いいこと思いついたんだよ。僕の望む二つを両方かなえるいい方法を。

「エレルア、僕と僕の故郷へ帰ろう。そこでなら、君は巨人と争わなくて済むんだ」
「いや、私はっ……!」
「何で嫌なの? 君が戦って傷付くことも、死ぬことだってなくなるんだよ? 僕と一緒に行こうよ」
「ベルトルト!」
「ね? 僕と暮らそう?」

キルシュタイン、助けて。
その一言が僕の脳に、胸に突き刺さる。……どうして僕じゃなくてジャンなんだろう。
優しくしたのに。ずっと一緒にいたのに。記憶がなくても、ジャンのほうがエレルアにとっては大切なの?
ああ、もういいや。エレルアには悪いけど、僕だって譲れないものはある。君を僕以外の人のところへやりたくなんかない。
戸惑うのは仕方ないことだけど、ジャンの名前を呼んだことは僕許せないなあ。もう二度と会えないようにしてあげる。ずっと僕のそばにいればいいんだよ。
エレルアを抱き上げて走る。どれだけ抵抗したって無駄だよ。僕は男で、君は女なんだから。
そうだ、壁を破壊して今この瞬間、人類を滅亡させてしまおうか。ジャンだって例外じゃないね。でもいいでしょ? エレルアには僕がいるんだから。

「エレルア、これからは僕とずっと一緒だよ。故郷に、つれていってあげる」

僕が笑いかけたとき、エレルアの目から一筋の涙が流れたような気がしたけど、僕は気付かないフリをした。
ねえ、エレルア、僕のそばでだけ笑ってよ。



――
image……Blood Teller/飛蘭
花火さんリクの「ベルトルトが夢主を無理矢理故郷に連れて行く」でした。
ベルトルトさん病んでる…! 本編でも病みます、多分。
なんかベルトルトさんって病んでるイメージが強いです。実際そうでもないとは思うんですけどね…。
長くなってしまって申し訳ないです、手直しや持ち帰りは花火さんのみ可です!
リクエストありがとうございました!
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