QLOOKアクセス解析If I were you, | ナノ

もし、あれがエレルアなら。俺はまた、あいつの隣にいられるんだろうか。
いや、いてもいいんだろうか。何も守れやしない、何もしてやれない幼馴染みでしかない俺が。

If I were you,I might refusal me.

部屋に戻って考えてみた。考えるのは、もちろんあの黒髪の女――エレルア・ハッテンブルクのこと。
五年前に行方不明になった幼馴染みと同じ名前。同じ髪色、瞳の色、声。
全てが同じ彼女が、別人な可能性は低い…というより、ない。あれはエレルアだ、間違えるわけがない。俺の大切な幼馴染みで…初恋の相手、なんだから。
シャツの中に下げていたネックレスを手にして、俺は思った。なんで今日俺を見た時に、前のように笑って名前を呼んでくれなかったんだろう、と。
エレルアなら、俺を見たらぜってー満面の笑みを浮かべて飛びついてくんのに。もう五年もたっちまったから、そうはいかねえのか?
まあ、もう抱き付けるような歳じゃねえか。今男女で抱き合ったりしてたら勘違いされるしな。まあそりゃしゃあねえことだ。
だが、気になるのは俺を見た時のあの冷たい目。表情もほとんど浮かんでなかった。エレルアは表情豊かな奴なのに。
俺が見失っていた時間のうちに、あいつは変わっちまったのか? 俺にちっとも笑いかけねえエレルアに、胸の奥が痛んだ。
もしかしたら、俺だけが必死になっていたのかもしれない。俺がいないとなんにもできねえからって、勝手に思い込んで。
エレルアにしたら、迷惑だったのかもしんねえ。俺はあいつの世話だけはいい加減にはしなかったから、エレルアはうんざりしていたのかもしれねえ。
あーあ、俺はなにやってんだか。エレルアの為を思ってやったこたが、空回りしてたのか? 馬鹿じゃねえかよ、俺は。
もし俺が憲兵団に入って、内地で暮らせたとする。エレルアを迎えに行っても、エレルアに俺と生活を送る意思がなけりゃ、意味なんてもんねえのに。

「俺、馬鹿だよなー…」

呟いてため息をつき、ごろりと体勢を変えた。ちゃらっという小さな音をたてたネックレス。はめ込まれた赤い石を見ていると、これを渡した日のことを思い出した。
渡した時、エレルアの奴びっくりして俺とネックレスを交互に見てたっけ。俺が首にかけてやると、ありがとうと本当に嬉しそうな顔で笑ったあいつの顔。今でもハッキリと覚えてる。
もう、あの頃には戻れないのか。ネックレスを握り締め、二度目になるため息をついた。
そういえば、エレルア俺達が訓練してるときにいたっけ? あいつの名前が呼ばれたことはねえ。なのになんであんなところにいたんだ…?
一度気になると、別の疑問もぽんぽん湧き出てくるわけで。疑問のあまりの多さに俺は考えることを諦め、布団をかぶって寝ようとにした。
少し湿った空気が俺の思考をさらに掻き乱して、俺は盛大な舌打ちを部屋に響かせたのだった。
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