QLOOKアクセス解析If I were you, | ナノ

単行本十巻ネタバレ注意!




彼女はとても美しかった。まっすぐな目も、まっすぐな姿勢も、凛とした声も。
ずっと前から知ってるよ。僕は、君を探していたんだから。
ごめんね、僕はただただ狡い“人間”なんだ。

I I were you,I could know your think.

僕の遥か前を立体機動で駆けるエレルア。重力を感じさせないそれには、ただ感嘆が漏れるばかり。
ねえ、エレルア。僕はね、ずっと前から君を知ってるんだよ。視界の端で流れていく木にアンカーを刺しながら、僕は呟くでもなく思った。
五年前、ウォール・マリアを壊したのは他でもない僕だ。虚像の平和を壊したあの日。僕は君を見た。
今より短い黒髪を二つのおさげに結って、質素なワンピースを着ていたよね。今の君とは正反対だった。人間が小さく見える中、君だけはなぜだかハッキリと見えたんだ。
可愛いと思った。人間には興味なんてなかったけど、エレルア、君だけにはどうしてだか興味が湧いたんだよ。
今思えば、そういう運命だったのかもしれない。君は人間で、僕は巨人。
立体機動がうまいエレルアは、きっと調査兵団に入るんだろう。そうしたら僕と君は敵になっちゃうね。そんなの、嫌だよ。
ずっと君と話したいと思ってた。君に触れたいとも。あの日から、僕はずっと君のことを考えてる。
変なのは自分で分かってるんだよ。こんな気持ちを抱いちゃいけないことぐらい、ちゃんと分かってるんだ。
それでも、僕は君が欲しいと思った。弱くて脆い、人間という存在の君だけど、本当に欲しくて仕方ないんだ。
無表情で皆を追いかけるエレルア。本当に無駄のない立体機動だ。才能なのかな、努力なのかな。もっと早く僕達と練習したら良かったのにな。そうしたらもっと近くにいられたのに。
卒業まであと三ヶ月だ。それまでにエレルアと仲良くなれたら。そんなことを考えていた時だった。
視界からエレルアが消えた。ビックリして辺りを見るけど、エレルアはどこにも見当たらない。
装置の不具合なんだろうか、大丈夫かな…。心配になってきたとき、前方で下から誰かが上に飛んだ。
風になびく編まれた黒髪。ぶれない姿勢。エレルア、だった。彼女は地面すれすれまで下がり、そこから沈んだ分の反動を利用してそれを高さに変えたのだ。
綺麗だった。飛んでいるかのように思えた。自由自在に立体機動装置を操るエレルアは、まるで鳥のようだ。
そのまま前方へ落ちて、誰かを捕まえたみたい。声からしてアルミンかな? 驚いただろうな、後ろからじゃなくて上からだから。
驚いた表情をしているアルミンを想像して、僕は一人でクスクス笑った。そろそろ僕も真面目にやらないと。
エレルアとは違う方向へ体を向け、みんなを探す。少し探すとサシャとコニー、それからアニを見つけて、僕は困ったように笑うしかできなかった。これは一筋縄ではいかないなあ。
なんて思ってたら、僕の横を横切る黒髪。あれ、なんでエレルアがこっちにいるんだろう。
僕の疑問なんて露知らず、エレルアはまた地を這うように深く沈み込み、彼らの視界に入らないように近付いていく。
アニが僕に気付いて逃げようとしたけど、もう遅いんだよアニ。下から飛び出してきたエレルアがアニの腕を掴む。
アニは目を丸くして、アンタどっから…、とエレルアに問うていた。エレルアは下から、なんて真面目に答えるもんだから、僕は我慢できずに笑ってしまった。まさかそんな風に答えるなんて思ってなかったよ、やっぱり欲しいなあエレルア。
彼女なら、僕達を…ううん、僕を受け入れてくれるかもしれない。正体を明かしても、僕の傍にいてくれるかもしれない。
ねえ、エレルア。僕五年も待ったんだ。だからさ、僕の傍にいてよ。君をずっと探してた、ずっと欲しいと思ってた。
大切にするから。僕が守るから。だから、僕の傍に。
なんて恋心とはかけ離れたこの感情がなんであるかを分かっていながら、あえて恋心とよんで、僕は君を求めた。
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テーマ「人外ファンタジー」
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