QLOOKアクセス解析If I were you, | ナノ

五年という年月は、俺とあいつの間を裂くには十分すぎた。
今更遅かったんだ。守るなんて、傍にいるなんて。
もうあいつは俺を必要としてねえから。

If I were you,I would how I think of me.

教官の指示をすっかり聞き逃していた俺に、指示を教えてくれたのはベルトルトだった。どうやら俺とベルトルト、エレルアが鬼らしい。
教官に慈悲はない。いや、ミカサを鬼にしていないだけ、少しの慈悲はあるか。俺とベルトルトとミカサが鬼だったら、誰も逃げきれないだろう。まあ今選ばれた鬼でも逃げ切るのは至難の技だろうが。
エレルアに目をやれば、ガスの残量を確認していた。やっぱり表情は浮かんでいない。
まるで別人のようなエレルアを相手にするのは怖い。別に威圧感があるだとか、そんな怖さじゃねえ。俺が今のエレルアを作ってしまったのだという事実を突きつけられるのが怖かった。
前の朗らかに笑って、俺にべったりだったエレルアを殺したのは、紛れも無い俺だ。あの日、手を離したから俺の知るエレルアは“死んだ”。
今更、力を得たって、安全を確保して迎に行ったって、遅すぎたんだよ。俺の知ってるエレルアは、とっくにいない。いるのはエレルアに似た“別人”。
ああ、これが俺の罪の行き着いた先か。贖罪なんかより、ずっとキツイキツイ現実。こんなことになるならあの日――…。
そこまで考えて、その考えを頭から追い出した。冗談でもおもっちゃいけねえことだ、こんなこと。不謹慎すぎる。
俺が頭をかきむしっていると、隣から柔らかい声がした。

「えっと、エレルアは立体機動できるの? 今日から訓練するなら、鬼は無理なんじゃない?」
「大丈夫、できる。それから、名前は?」
「あ、ごめんね、僕はベルトルト・フーバー。仲良くしてくれると嬉しいな」

にこりと笑って手を差し出すベルトルトに、エレルアは一度困ったように眉を寄せた。それでもよろしく、と小さく言ってから手を握り返す。
俺との扱いの差がひどいぞ、オイ。俺は嫌われてんのか? 訳がわかんねえ。
なんで俺を嫌うのか聞こうと口を開きかけると、教官が鬼ごっこ開始の合図を出す。鬼ごっこは一時間行われる。その間に俺らは全員を捕まえないと昼食抜き。それはなんとしても避けなければならない。
さていくか。ワイヤーを伸ばそうとしたとき、俺の横を身軽な足音が過ぎていった。
見てみればエレルアで。少し助走をつけた後、ワイヤーを伸ばしふわりと宙に浮いた。
そこからは自分の目を疑った。全くブレのない姿勢のまま、すごいスピードでエレルアは森の中へ消えたのだ。運動音痴だったのが嘘みてえだ。
ぽかんとしていると、ベルトルトも驚いたのか目をかっぴらいていた。

「エレルア、立体機動すっごくうまいね。下手したら僕やジャンよりうまいんじゃないかな…?」
「あ、ああ…。立体機動装置の特性をうまく使ってやがる…。しかも、あいつあのスピードでガス強めに噴射してねえよ。通常のガスの噴射であれだけのスピードを出してやがる」

化物かよ。そう呟こうとして俺は口を閉じた。思ってもそんなこと、言っちゃなんねえ。あいつはエレルア、なんだから。
いつまでたっても動かない俺らに痺れを切らしたのか、教官が咳払いをする。あ、やべえ。咳払いで我に帰った俺は、急いで立体機動のために一歩を踏み出した。
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