QLOOKアクセス解析If I were you, | ナノ

※10巻ネタバレあり

僕の秘密をエレルアに言ったら、エレルアは傷付くだろうか。
何食わぬ顔して隣に並ぶ僕が人類の敵であることを言ったら、軽蔑する? 殺意を抱く? 罵る? それとも?
考えても分からない。……いや、考えたくないだけなのかもしれない。そんな自分が恐れられるそうなことを言ったら、なんて考えたくもない。
やっと隣を歩けるようになったのに。それを自ら壊すなんて馬鹿な真似、僕はしない。

「エレルア」
「何。どうかした?」
「これから言うもしっていう仮定話、僕の大きな独り言だと思って聞いてて」

僕がそう言うと、エレルアは意味が分からないというように一度首を傾げてから、それでもいつもみたいな無表情に戻っていいけど、とだけ僕に返した。
本当は、独り言でもなんでもない。僕が直隠している本当の僕を、君にだけさらけ出そうとしてる。嫌われたくないから、もしの仮定話で、しかも独り言だって嘘までついて。
――もしも、僕が巨人だったらどうする? エレルアは僕を駆逐する? それとも、僕を守ってくれる? 最近、そんな夢を見るんだ。どうしても怖いんだよ、エレルアが僕から離れていきそうで。
ごめんね、僕はまた嘘を重ねる。嘘を重ねれば、自分が苦しいだけだって分かってるのに、嘘をつくのをやめられないんだ。
どれだけ嘘をついても見透かされそうで、ばれそうで怖い。本当はばれてるのかもしれない。エレルアの真っ直ぐな視線は、僕の中の汚い部分をもう見てしまっているのかもしれない。
だとしたらどうしよう。エレルアは僕を軽蔑するんだろうか。それとも、エレルアのことだから油断したときに殺されてしまうんだろうか。
脳裏をよぎるのは、そんな起こってほしくないことばかり。どう自分に好都合なように考えたって、今の関係が崩れるのは避けられない。
それなのに、僕は自分の本当の姿がばれてもおかしくないことばかりを、仮定として、独り言として紡ぐ。僕は意気地なしの怖がりだ。エレルアとは正反対の、救いのないどうしようもない奴なんだ。
エレルアはそんな僕を笑う? 笑ってくれていいんだよ、僕は笑われて当然な人間だから。傷付くのが怖くて、でもエレルアが僕にどんな反応をするのかが気になって仕方ないんだ。
もしエレルアが僕の正体を知ってそれでもなお僕を受け入れてくれるなら、僕はエレルアを故郷へ連れて行こうと思う。故郷で一緒に安全で幸せな生活を送りたい。僕のそんな淡い夢をエレルアなら叶えてくれるだろうから。
でも逆に僕を拒否したのなら。僕はエレルアを殺して自殺するかもしれない。……実際、僕が死ねるかどうかは分からないけれど、いや、きっと死ねないだろうけれど。エレルアが僕を受け入れない世界なんて、あっても仕方ない。そんな世界なんかで生きる意味なんて、ない。
だから僕は。……自分でも物騒なことを考えているとは思うけれど、仕方ないじゃないか。僕はそれほどまでにエレルアのことを想ってるんだから。

「巨人、」
「エレルア?」
「駆逐……できないかもしれない」
「え? どういうこと?」
「私の独り言」

――たとえベルトルトが巨人だったとしても、私は何もできない。ベルトルトが去るのを、ただ見ているだけだと思う。人類の敵だったとしても、友人を私は殺めることはできない。それが本人が望むことだとしても。
僕に視線を合わせないで紡がれた言葉に、僕はただただ嬉しいとしか思えなかった。エレルアは、僕が巨人でも殺さない、殺せないってはっきりといってくれた。
ああ、求めちゃいけないのは分かってるのにこれ以上の関係を、言葉を望んでしまう。友人という位置いることでさえ、僕にとっては嬉しくて仕方ないのに、恋人という特別な位置を望んでしまう。なんて欲張りなんだろう。
甘い関係を望み、それに身をおけば体が、心が錆び付き、蝕まれ、動かなくなってしまうことは分かっているのに。それでも僕はエレルアの隣に。
熱い指先で、エレルアの結われていない髪をすく。ふわりと香ったシャンプーの香りに頭がくらりと揺れる。
ああ、こんな毎日がいつまでも続けばいいのに。なんて、叶いもしない願いを胸の中に秘め、エレルアを優しく抱きしめた。


――
image……独り言ロンリーナ/ONE OK ROCK
まいちゃんさんのリクエストでベルトルトでした。
シチュエーションはお任せということでしたので、連載番外編で書かせていただきました。
暗いしシリアスだし若干ヤンデレ入ってるしで、甘くもない話で申し訳ありません……。
手直し、持ち帰り等はまいちゃんさんのみ可!
リクエストありがとうございました!
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