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07

 手紙の主はどんな人物なのだろう。ふと気になって窓際で待ってみることにした。コーヒーは多めに淹れてあるし、時間を潰すための本だってある。差出人を待つ準備は出来た。
 月明かりがあれば灯りはいらないだろう。窓から差し込む青白い光を頼りに、俺は紙の上に並ぶ活字を追い始めた。
 かたんという小さな音。鉄と鉄がぶつかる音にはっとすると、俺は机に突っ伏していた。いつの間にか寝ていたらしい。知らない間に外れていた眼鏡をかけ体を起こしてみると、窓の外の人物と目があった。
 月光に浮かぶのは鮮やかな青髪。俺を見つめるのは、よく熟れた柘榴の実のように深い紅色の瞳で。窓の外に立っている少女は、今まで見た人間の中で一番綺麗だった。
 何か言おうと口を開きかけると、彼女は我に返ったようで、何かに弾かれたかのように走り出した。
 嫌だ、待ってくれ。彼女を追いかけるために慌てて立ち上がり、家の外へ出る。後ろで椅子が倒れた音がしたが、いまは気にしていられない。
 町のほうへ目をやれば、生い茂る木の中を走る少女がいた。

「待ってくれ! お前がっ、お前が手紙の差出人なのかっ!?」

 今まで数えるほどしか出したことのない大声が森の中に響く。その声に少女が止まって振り向いた。その顔には形容しがたい笑顔が浮かんでいた。

 あ・り・が・と・う

 少女の唇がその五文字を紡ぎ終わると、彼女はまた走り出す。今度は声をかけられず、残されたのは俺だけ。
 夢のようだった。いや、夢の中なのかもしれない。地を踏んでいる感覚がないが、ポストまで歩いて中を覗き込む。
 淡い月光に浮かび上がったのは見慣れた薄桃色の封筒。それも、二通。ポストの中から取り出したその手紙は、何故だかいつもよりも温かく感じた。

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