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 外がやけに静かだ。最近は戦争しているから大砲の音とか、銃の音とか、人の悲鳴が小さくではあるが絶えず聞こえていたのに。
 今日に入ってから、あんまりそういったものが聞こえない。どうしたんだろう、条約でも結んだのかな。それで戦争は終わったのかな。
 だったらいいなあ、なんて思ってしまう私は人間への常を捨てきれていない馬鹿なのかもしれない。こんな扱いを受けているのは人間のせいだというのにね。
 戦争が始まる前に、私は足に枷をつけられた。もちろん、鍵は人間が持っている。なんでも私が抜け出して、相手の軍につかないように、らしい。
 思わず笑いそうになった。何回もここを抜け出しているのに、それにさえ気付いていない人間が、今更になって考えた私を縛り付けておく案。
 どこの国に行ったって、人間の本質は変わらないんだからどこかへ行くわけないのに。まだこの国は私をすぐに殺さなかったから、ここに生まれて少しはましだと思ったのにね。
 でも、やっぱり人間は人間だった。今朝になってからいきなり武器を持った人間がこの部屋にやってきて、私を殺そうとした。
 とっさに石に変えてしまったけれど、この石像どうしよう。もう夜になる、ろうそくに火をつけたいのにこの石像が邪魔で邪魔で仕方ない。
 枷につながれた鎖が私の行動を縛る。なんとかマッチをすってろうそくに火をつけ、部屋の明かりを確保。眠るまではろうそく一本でもつだろう。
 ついつい癖で、便箋と封筒、それから羽ペンとインクをとってきてしまった。もう彼は逃げてしまっただろう。手紙を書いたって無駄なのに。
 一度でいいからきちんと話してみたかったなあ、なんて。今更思ったって仕方ないのにね。あの手紙を書く前に会いたいって書いておけばよかった。そうしたら、今みたいに後悔することはなかったかもしれないのに。
 はあ、とため息をついて彼からもらった花で作った栞をつついた。これから先、一人か……。また理不尽な扱いをうけても黙って耐えないといけないのか。
 いや、でも戦争が終わったなら私は殺されるのかもしれない。もう利用することがないわけだから。
 彼らにしたら、私は生きていても兵器でしかないから。いらなくなったら処分される。それは当然のこと。
 もうすぐで死んでしまうのか。なんて揺れるろうそくの炎を見ながら思った。まだ死にたくない。
 今まではいつ死んでもいいやって思ってたのに。何も未練なんてなかったのに。こんなにも私を生に執着させたのは彼だ。
 でももう彼はあの家から逃げてしまったんだろう。ここから出られたら、あの家で暮らそうかな。そうしたら、彼が帰ってくるのを待てる。
 考えてから、いつ出られるか分からないということに気付いて苦笑した。出られるっていう確証はないのにこんなこと考えてもむなしいだけだ。
 彼に手紙を出しにいっていた夜のこの時間、私は何をしていたんだろう。眠っていた? 紙に何かを書いていた? それとも、本を読んでいた?
 もう忘れちゃって何も分からないや。ただ一ついえるのは、ただつまらなかったということだけ。つまらなかったから記憶にないんだろうし。
 これから先、本当にどうしよう。そう考えていたとき、たくさんの人が石の階段を誰かが上がってくる音がした。
 ああ、今度こそ死ぬのかな。そう思いながら、私は開けられるであろうドアを見つめた。

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