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2013.03.10.Sunday


苗字は白椿固定

教室へ行くため、階段を上る。もちろん黒子と一緒に。
私が動くたびにゆらゆらと動く銀色の尻尾。高い位置で一つに結んだ長い髪は、帝光にいたときからは想像もつかないだろう。
黒子の視線が、左右に揺れるそれに固定されている。なんて分かりやすいんだろう。
くるりと振り返れば、少し驚いたような顔の黒子と顔を合わせることになった。

「そんなに気になる?」
「……はい。僕の知っている白椿さんは、髪がとても短かったので」
「そうだよね、あのころは本当に短かったもん。伸びては切って、伸びては切って。緑間によくグチグチ言われたっけ。女なのだから、そんなに髪を短く切るのはやめるのだよ、って」

苦笑交じりに言うと、黒子は少し目を瞬かせてからそうですねと頷いた。
目にゴミでも入ったんだろうか。だったらあんまり瞬きしないほうがいいと思うんだけどなあ。
そんなことを考えて、ふと気がついた。あれだけ過去を嫌っておきながら、口から出たのは過去の話。
ははは。なんて馬鹿らしい。嫌いだといいつつも、内心はあの頃が恋しいの?
自分の行動だけど、矛盾しすぎていて笑えた。まだあの頃が恋しいと、戻りたいと思うの?
戻ってどうしようって言うの。戻ったところで、どうにもならないじゃない。
ぐるぐると視界が回る。気持ちが悪い。過去を振り返る私が、過去に縋る私が。
もうどれだけ望んでも、あがいても、あの頃のチームに戻れるはずないのに。
皆違う方向へ歩いていって、ただ私は置いていかれて。そんな状態だったのに、彼らを集めたってどうしようもないじゃないか。
また私は傷付きたいの? 人が離れていく寂しさを、周りに誰もいなくなる辛さを、置いていかれる痛みを、また自分に課すの?
そんなの、まっぴらごめんだ。そうならないためにこの学校を受験したんだから。
もう一人になるのはいやだ。誰かに疎まれるのはいやだ。置いていかれるのは、いやだ。
怖い怖い怖い。寂しい寂しい寂しい。辛い辛い辛い。痛い痛い痛い。
色んな負の感情が頭の中で入り乱れる。まともな思考なんてできやしない。
泣きそうになるのをこらえて、また階段を上り始めると髪が後ろに引かれた。
階段にかけた足を下ろすと、髪を掴んでいた手がするりと離れる。その後に耳を抜けたのは黒子の声で。

「白椿さん。どうしてそんな泣きそうな顔をするんですか」
「……泣きそうな顔なんか、してないよ」
「白椿さん、嘘つかないでください。僕には嘘だって分かってるんですよ」

――まだバスケが好きなんでしょう? 本当は、やめたくなかったんでしょう?
……お願いだから、これ以上私を苦しめないでよ。やめるしか、方法がなかったんだもの。
黒子に、私の気持ちが分かるはずないよ。だからそんなことがいえるんだ。
消えることを余儀なくされた私と、消えることを選んだ黒子には大きな違いがあるのに。
一緒に、しないでよ。疑問を抱いていなかったら、今でも彼らとバスケをしていたんでしょう?
認められなかった私と、認められた黒子は違うの。天と地の差があるの。
もうこれ以上、現実で私を傷つけないで。痛くて仕方がないよ、胸が痛いよ。
ぎゅっと拳を握り締めて、私は逃げ出したい衝動を押さえ込んだ。
そうと知らない黒子は更に続ける。

「また、始めましょうよ。僕と、バスケしましょう、白椿さん」

――一人ぼっちになんかしません。だから僕と。
ヤメテ。ヤメテヤメテヤメテ。そんな嘘いらない。私をおいていったくせに。
私を一人にしないって言いながら、私を置いていったくせに。どうして守れない約束しようとするの?
言葉なんて、約束なんて形のないもの、後から簡単になかったことにできるじゃない。
不確かなものは、信じられないよ。触れなきゃ信じられないよ。
いまだに君の言葉が、行動が私の行動を制限しているのに、これ以上制限してどうするの?苦しいよ。

「やめてよ。やめてよ黒子」
「白椿さん……?」
「これ以上私を縛り付けないでよ。苦しいの、痛くて辛くて寂しくて、苦しい。私にとってのバスケは、そうなの。だから。もうバスケを近づけないでよ」

ぼろりとこぼれた涙に黒子がうろたえた。ないたことのない私が、初めて見せる涙だもの、仕方ないかもしれない。


ここまで書いて、病んでいることに気がついて書くのをやめました。
早く続きを書かないと…。


23:35|comment(0)


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