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2013.04.23.Tuesday


*名前は巫桜子で固定

――拝啓 巫桜子様
こんな書き出しをしたは良かった。想いを伝えるには手紙が良いのだと、お節介な高尾が言っていた。
それに従って手紙を書くのは癪だが、手紙の方が巫も考えやすいかもしれない。そう思ったのに、だ。
何を書けばいいのか、さっぱり分らん。俺は生まれてこの方恋文など、今まで一度も書いたことがないのだ。
どう話を切り出して、どう想いを伝えればいいのか。そんなこと全く分からない。
率直に伝えるべきか、遠回しに伝えるべきか。
遠まわし過ぎても巫は気付かないだろう。彼女は鈍いから。
だが率直すぎるのも良くない。俺がどんな顔をして会えばいいか分からなくなるからだ。
どう書けばいいのだろう。そればかりがぐるぐると頭をかけ巡って、頭が痛くなってきた。

「好き…、か」

呟いてみても、適当な言葉は見つからない。さて、どうしたものか。お手上げだ。
こんなことなら、高尾に少し聞いておくんだった。そんなことを思ってから、俺はぶんぶんと首を振った。
そんなことをすれば、高尾がおもしろがるだけだ。俺からおもしろいことを提供してやる義理はない。
はあ、と小さなため息が漏れる。そもそも、俺のような冴えない書生なんかに恋文をもらって、巫は困らないだろうか。
俺は気遣いも何もできない。出来るのはただ本を読み、学問に励むことだけだ。
冴えない、面白みのない俺に恋文をもらっても、嬉しくなんてないだろう。
それを考えてしまうと、一気に恋文を書くことが難しくなった。出来るだけ、この好意を悟られないように、でも恋文だと分かるように。
そんな矛盾は、俺の語彙力では到底出てこないような言葉を欲していて。ああ、どうしろというのだ。
ペンを墨汁につけたとき、ふとひらめく。そうだ、夏目漱石の言葉を借りればいいのか。
彼が最近英文を意訳したのだと耳にしたばかりた。そうだ、なぜ思いつかなかったのだろう。
書くことが決まれば、恋文が書きあがるのはすぐだった。
無骨な炭の字が、巫へ愛というものを紡いでいた。

月が、綺麗ですね


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