「「アヤカシ?」」
「この国で言うならモンスターだよ多分。妖怪とも言うけどね。」
「モンスターっていうと…あれか?ドラキュラとか狼男とか」
「そうそうそんな感じ。
んで、その妖達の困ってる人間とか妖とかを助けるのがうちらの活動ー。」
「でも爆発が起きた後、誰かに連れてかれたかもわからないの?」
「うーん、その後一気に意識飛んじゃったからなあ。全然わかんない」
「まず、お前の国からここまでどうやって運んだんだ…?」
「てかここ時代おかしいにもほどがあるんだよねえ。タイムトラベルでもしちゃったかな」
「そんなまさか」
「まあ信じなくていいよ、うちも信じらんないもん。
とにかくさ、『賢者の石』?とやらを探すの手伝うし、なんかあったら助けちゃうし、雇って損はないと思うよ?」
「へ!どうだかな」
「なんだようちに負けといて」
「負けてねぇ!!ありゃ不意打ちだろ!!」
「兄さん、列車で大声出しちゃダメだよ」
人一人いない列車の中。唯一の乗客はキイたち三人だけだった。彼らが向かう先はユースウェル炭鉱、通称『東の終わりの街』。もともと観光地とされているらしいが、エドワード曰く、「こんな場所に観光も無いだろう」らしい。確かに炭鉱現場は危険地とされているのもあり、(勿論それなりの安全対処は施されているだろう)わざわざ訪れるところでも無いのだろう。
しかしいざ到着し、列車から降りて辺りを見渡せばなんとも静かというか、殺風景な景色がそこにあった。
「なんか…炭鉱っていうともう少し活気のあるもんだと思ってたけど…」
「みなさんお疲れっぽい…」
「あ、エドワード」
「あん?」
ゴン
「おっとごめんよ」
キイが言う前に、エドワードの頭に直撃したのは角材だった。そしてことが起こったあとに、キイはエドワードに告げた。
「危ないよー」
「先に言え!」
「お!!」
エドワードが怒鳴った後、角材を当てた張本人の少年は見慣れない人物達を見て嬉しそうに声をあげた。
「何?観光?どこから来たの?メシは?宿は決まってる?」
「あ、いや、ちょっと………」
しどろもどろなエドワードをお構いなしに話を続ける少年は、近くにいたガタイのいい男を呼んだ。
「親父!客だ!」
「人の話聞けよ!!」
「あー?
なんだってカヤル」
「客!金ヅル!」
「金ヅルってなんだよ!!」
少年もといカヤルとエドワードの一方的な会話のなか、カヤルの父親はヘルメットを外しにっと口はしをあげた。
「おう!」
そんなこんなで宿屋落ち着いたエドワード達。中では先ほどの静けさなど嘘のように賑わっていた。
「いやホコリっぽくてすまねえな
炭鉱の給料が少ないんで店(こっち)と二足のワラジって訳よ」
「何言ってんでえ親方!
その少ない給料を困ってる奴にすぐ分けちまうくせによ!」
「奥さんもそりゃ泣くぜ!」
「うるせぇや!!」
男達が話しているそばでは、奥さんがエドワード達に宿の確認をとっている。
「えーと一泊二食の三人分ね」
「いくら?」
「高ぇぞ?」
「ご心配なく、けっこう持ってるから」
カヤルの父親はニヤリと笑うとエドワードに指を三本立てた。
「30万!」
エドワードがずっ転けるには充分な額だった。
「……宿って普通そんなすんの?」
「まさか!」
「ぼったくりもいいトコじゃねえかよ!!ひとケタちがうわい!」
「だから言ったろ『高い』って。めったに来ない観光客にはしっかり金を落としてってもらわねえとな」
「冗談じゃない!他あたる!」
そういって出ていこうとしたエドワードだが男の手により頭をガシとあっけなく捕まった。
「逃がすか金ヅル!!」
「ひ〜――――」
「あきらめな兄ちゃんよそも同じ値段だよ」
そうカヤルに苦笑いで言われてしまえば、どうしてもここに泊まらなくてはならないらしい。しかしこちらとて払う金が無いのだと、仕方なく三人の金銭会議を余儀なくされたものの、財布の中身が増えるわけが無く。
「…足りん。こうなったら錬金術でこの石ころを金塊に変えて!」
「へーそんなこと出来るんだ錬金術って」
「でも金の錬成は国家錬金法で禁止されてるでしょ!」
なんて自ら危ない方向に走る兄を止める弟と変なところに食いつく用心棒(仮)。
「バレなきゃいいんだよバレなきゃ」
「うわ黒ー」
「兄さん悪!!」
そんな弟にあくどい笑みを浮かべて聞く耳持たずな最少年軍人。
しかしいつの間にやらその間で聞き耳を立てていたカヤルによって、その会議に終止符が打たれた。
「親父!この兄ちゃん錬金術師だ!!」
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