なのになぜ、こうなった?
「エドワード・エルリック…」
鋼の錬金術師!!
エドワードを探しに来たという警察はアッサリ死んでしまった。否、殺されてしまった。
傷の男(スカー)によって。
まき散らすように飛び散る血、その血を右手に垂らした褐色の男。額には大きな傷跡、間違うわけがない。
逃げなければ。しかし脚が恐怖で動かない。早く早く、動け脚!!!
殺される!!!
ゴーン!!!
「っアル!!逃げろ!!」
鐘の音に触発されて跳ねるように動いた脚。早く早く早く早く!逃げろ!
路地に入りアルフォンスによって作られた巨大な壁。しかし男はそれを容易く破壊し、兄弟が奥へ逃げようとすればそれをどうやったのか、周りの壁を破壊し瓦礫になったそれで道を塞ぐ。袋の鼠とはこのことか。
ギン、と開かれた瞳孔はエルリック兄弟と言う獲物を狙う。
「あんた何者だ。何で俺たちを狙う?」
「貴様ら造る者がいれば壊す者もいるという事だ」
「・・・・・・やるしかねえ・・・ってか」
エドワードが観念したように恨めしげにスカーを見て、手のひらを合わせて己の鋼の腕を武器へと化した。アルフォンスも目の前の敵に構えを取る。
「いい度胸だ・・・」
そう口端を上げるは狂気の沙汰か勝機の確信か。
「いくぞ!」
否。
「だが遅い!」
その両方か。
「………!!」
「アル!!!」
砕かれたのは弟の仮の身体。怒りに身を任すかのようにスカーに突っ込むエドワードだがそれも適わず。
「遅いと言っている!」
すさまじい光がエドワードとスカーの中心から広がった。スカーは弾けなかったエドワードの身体に不思議そうにしていると、転がったエドワードが起き上がり悪態をつきながら上着を脱いだ。右手で触れたその腕は銀色に鈍く輝いていた。
「機械鎧・・・なるほど“人体破壊”では壊せぬはずだ。あっちはあっちで鎧をはがしてから中身を破壊してやろうと思ったが肝心の中身が無い。
変わった奴らよ…おかげで余計な時間をくってしまったではないか」
「兄さんダメだ逃げた方が・・・」
「馬鹿野郎!!おまえ置いて逃げられっか!!」
慌てる兄弟にエドワードの練成を冷静に分析するスカー。そして、向かってくるエドワードへの、
「ならば、」
壊し方が決まった。
「まずはこのうっとうしい腕から破壊させてもらう」
弾けたのは強靭だった鋼の腕。
崩れたのは鋼の錬金術師。
「神に祈る間をやろう」
「あいにくだけど祈りたい神サマがいないんでね」
だから、
「あんたが狙ってるのはオレだけか?」
「邪魔するものは排除するが今、用があるのは鋼の錬金術師…貴様だけだ」
「じゃあ約束しろ。弟には手を出さないと」
せめて、アルフォンスだけは。
「兄・・・」
「約束は守ろう」
オレの我侭で哀れな姿になった、たった一人の弟だけは。
「何言ってんだよ……兄さん何してる!逃げろよ!!」
破壊された体は自由を聞くことを許さない。兄の身体げ血に濡れるのを見ているしかない。
「やめろ・・・やめてくれ」
「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
凛とした声だった。
「すみません」
若干幼い、ハスキーボイス。
エドワードが顔を上げると、目の前にあったのは刃だった。スカーの右手とエドワードの間を遮る銀色の光。彼のすぐ後ろには、この場に似合わない真っ白い髪の少女。
少女は言った。
「この人は殺さないでください」
少女は刀を振り上げた。
(激情は溢れ出し)
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